aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

フェンネル/ウイキョウ 人間万歳

香りを回らせる薬草


セリ科のフェンネル 学名: Foeniculum vulgare は、
ヨモギと同じで神聖な9つのハーブのひとつ、と推測されています。
日本ではウイキョウ(茴香)とよび、独特な甘みと樟脳をブレンドしたような香りで、魔術から化粧品、厨房から医薬まで、はばひろく活用されてきました。


フェンネル



フェンネルは古代エジプト、古代ローマで栽培されていた記録が残っており、現在ではインド、アジア、オーストラリア、アメリカと、広範囲に分布し野生化しているものも珍しくありません。
海岸や川沿いでも、土壌が適度に乾燥していれば元気に育ちます。


一般的にウイキョウと呼ばれるものは数種あり、植物学上セリ科とは縁遠いスターアニスもダイウイキョウと呼ばれます。
諸説ありますが、茴香(ウイキョウ)は中国名で、香りを回らせる薬草という意味があるそうですから、おなじ芳香成分をもつスターアニスにも、おなじ呼び名がついたのではないかと思います。



1.ウイキョウ-フェンネル


2.ダイウイキョウ-スターアニス(八角)、トウシキミ。マツブサ科のハーブ

スターアニス



3.オオウイキョウ-巨茴香、セリ科のハーブで学名 Ferula communis
茎は直径3~7cm、高さ2~ 3mに育ちます。
ギリシア神話では、プロメテウスが神界から火を盗み、オオウイキョウを火口(ほくち)として、(あるいは大きな茎の中に隠して)人間界にもちこんだとされています。
ちなみに魁神ディオニュソスの杖「テュルソス」はオオウイキョウの茎で作られているそうな。


✦ディオニュソスのお話はこちらの記事にも✦



人が人であるために


歴史や語り継がれた物語から、フェンネルは天界人が人間界に接触するときに頼りにしているハーブなんだなぁと思います。
おいそれと脱魂しないよう、タマシズメ的な力があるのかもしれません。
肉と骨でつくられた人間のかたち、輪郭を、しっかり維持するような。


それは男たちに力と何者をも恐れぬ勇気を与えた

荒々しい戦いに明け暮れる剣闘士たちは

日々の食事にそれを混ぜこんだ

そして戦いに勝利した者はフェンネルの冠を戴くのだった


アメリカの詩人

ヘンリー・ワーズワース・ロングフェロー(1807 - 1882)


飽食の時代といわれる古代ローマ、兵士たちは胃腸の働きをよくするため、そして活力と興奮作用を期待して、フェンネルの種を常備していました。
女性たちは満腹感をおぼえるフェンネルの風味をダイエット・サポートにしていました。
同時代の博物学者プリニウスは、フェンネルは目をきれいにするハーブで、自然の美しさを実感できるようになる、と記述しました。


食べたものはきっちり消化し、血肉を活力でみなぎらせ、摩擦を恐れず、美しくあるために肥満を避け、世界のスバラシサを実感するために感覚世界にコミットする、と。


なんというかもう、人間万歳、肉体サイコー、リア充生活まっしぐら!という感じですねw
血、肉、骨の存在を応援してくれるハーブ、さらに五感も刺激します、と。


肉体に中層重心をおとしてゆくことが、時代の最先端だったギリシャ・ローマ時代には、四大精霊も、エーテル成分も、見えなくなり、わからなくする必要があったのだと思います。
もうエジプト時代は終わったんだから、人間の頭が鳥とか獣にみえたりするのは、時代遅れ極まれりですよ、と。


プロメテウスのお話も、そもそもゼウスが神と人の境界線をきっちり分けようと決めたことがはじまりです。


人を人たらしめるために、霊魂をしっかり肉体に鎮めて、ふらふらさまよい出ないように。
そのためにエーテル界を見えなくする必要があったし、地上世界の美しさに開眼する必要があったんだろうな、と。



フェンネルは魔除けにも使われていたハーブ。
種は強力な守護魔力をもっており、悪霊やゴーストが棲む屋敷の鍵穴にフェンネルの種をつめておくと、すぐに消えてしまうというエピソードが面白いです。


消える?それとも見えなくなる?
あらゆる存在は「在る」と考えているわたしは、相手が消えるのではなく、自分の立ち位置が変わるのだろうな、と思っています。



フェンネルのレシピいろいろ


フェンネルの種子はスパイスとしてソースや魚料理、パン生地に混ぜて風味づけに使えます。
葉や、若くて柔らかい茎は細かく刻んでスープに散らしたり、魚の詰めものにしたり、そのままサラダにも。


また別の種ではありますが、野菜のフローレンスフェンネル(スイートフェンネルとも呼ばれる)は、球根状の水気の多い根をそのまま根野菜として煮たり、薄くスライスしてサラダにしたり(セロリに似ています)。


フェンネルシードが手に入らないときは、精油をドレッシングに1、2滴たらして風味をつけることもあります。
気管やのどの不調時は、お湯に1滴たらして飲んだり、冷えによる肩こり関節痛のときは、乳液に1滴たらしてすり込んだり。


健胃作用、駆風作用、利尿作用にすぐれており、からだを温めてくれるので冷えによる不調に重宝します。
仕事や社会的なおつきあい、合意的な現実をしっかり共有しなければならないとき、フェンネルはたしかに頼もしい感じがするなぁ、と。



*フェンネル精油は強力なはたらきがあるので、一度に大量使用せず、継続使用も避けた方がよいです。皮膚刺激を起こす場合もあるので、精油の使用はゆっくりちょっとづつにしてください。なにとぞ自己責任でお願い申します。



☆☆☆



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