aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

すいかずら

あまい香りと蜜をもつ金銀花


金銀にかがやくように、ふた色の花を咲かせる日本原産の吸葛(すいかずら)、学名 Lonicera japonica(ロニセラ ジャポニカ)は、花筒をつまんで花蜜を吸う風習から「すいかずら」と呼ばれるようになった説をよく耳にします。


すいかずら


英名でJapanese honeysuckle(ジャパニーズ・ハニーサックル)。


ハニー(蜜)をサック(吸う)なので名づけの背景はほぼ一緒のようです。


地方によっては「水を吸う葛(つた)」から、吸い葛(かずら)となった説もあり、別名にスイバナ、スイスイバナなどもあります。


日本に現存する最古の薬物事典「本草和妙(ほんぞうわみょう・918年編慕)」には、


忍冬(にんどう)・〈和名 須比可豆良(すひかずら)〉


と紹介されており、1000年以上まえから「すひかずら」の名で親しまれていたことがわかります。


忍冬は中国からはいってきた呼び名(漢名)で、常緑つる性木本である すいかずら の「冬のあいだも葉を落とさずにたえ忍ぶ」植生が由来になったそうです。


はじめ白く開花した花は受粉とともにに黄色く変化してゆき、金銀をちりばめたような枝ぶりから金銀花(きんぎんか)ともよばれていますが、生薬になる花のつぼみはそのまま「金銀花」という生薬名で処方されます。


茎や葉っぱの生薬名は「忍冬(にんどう)」と呼ばれ、利尿、健胃、解熱、浄血、収斂作用のある漢方として利用されており、東洋医学では「寒の性質をもつ薬草」とあり、熱感を冷ますために解熱や解毒、化膿した炎症などを鎮めるのにつかわれます。


日本の民間療法では茎葉のお茶が飲用されてきた歴史があり、現代市場にもスイカズラ茶が流通しています。


浴湯料として茎葉を煮だしたものは腰痛、湿疹、あせも、痔の緩和に活用されてきました。


金銀花をつかった忍冬酒(または金銀花酒)は、江戸時代の百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ・1713年)」に収載され、徳川家康のお気に入りだったとか。


奈良県の三輪山を御神体とする大神(おおみわ)神社には、「くすり道」とよばれる狭井神社(さいじんじゃ・摂社)につながる坂道がありますが、例年4月には鎮花祭(はなしずめのまつり)が開催されています。


春の花が散り舞うころに猛威をふるう疫病を鎮めるために、花を供して病をおさめるのがはじまりとされており、現代では「薬まつり」とも呼ばれます。


鎮花祭には三輪山に自生する百合根(笹百合の根)と忍冬(すいかずら)をお供えし、狭井神社のご神水でつくられた忍冬酒がふるまわれるそうです。



平安時代の律令の注釈書『令義解(りょうのぎげ)』に鎮花祭のことが記され、春の花びらが散る時に疫神が分散して流行病を起こすために、これを鎮遏(ちんあつ)するために大神神社と狭井神社で祭りを行うとあります。


この注釈書からこの祭儀が『大宝律令』(701年)に国家の祭祀として行うことが定められていたことがわかります。


春の大神祭のところでも述べましたが、崇神天皇の御代に疫病が大流行した時、大物主大神が疫病を鎮められました。


病気鎮遏(ちんあつ)のご神徳を仰ぎ、更には荒魂(あらみたま)を奉祭する狭井神社の霊威のご発動をも願って、大神神社と狭井神社の二社で鎮花祭が行われたもので、疫病除けの祭典として二千年来の由緒があります。


現在も特殊神饌として、薬草の忍冬(すいかずら)と百合根が供えられます。



大神神社の公式ホームページには『ご祭神の御名、「大いなる物の主」はすべての精霊(もの)をつかさどられる・統べられるという意味をあらわし、災をなす精霊(もの)をも鎮め給う霊威から厄除け・方位除けの神様としても厚く敬われています』とあります。


大物主大神(おおものぬしのおおかみ)への神饌(しんせん)となった日本の すいかずら は、古の時代より天にむかってらせん状に枝をのばしながら、蛇体の神とされる大物主大神のきざはしとして、天地をつなぐ糸のような役目を果たしているのかもしれません。


スイカズラ属は世界に180種、日本には20種ほど存在すると現代植物学で整理されており、漢方薬や飲用品のために商用栽培もされていますが、自生種は北海道南部から九州まで分布しています。


ウィキペディア-スイカズラ属 のページで、日本に自生する種、

スイカズラ、キンギンボク、ハスカップ、ヤマウグイスカグラ

コウグイスカグラ、オオヒョウタンボク、ツキヌキニンドウ

の写真をみることができます。


古く日本では新芽のやわらかいものは春の山菜となり、ごく一般的な食材だったといいます。


開花がはじまる初夏のころ、宵口さんぽで鼻をかすめる すいかずら の香りは、 ジャスミンとすずらんをまぜたようなここちよい香りで、古の時代から日本の四季を代表する花の香りのひとつだったといえます。




スイスイ体験


すいかずらの花はふたつならんで開花し、蜜を吸うためにあつまる虫たちが止まりやすいカタチをしています。


スイカズラ、ハニーサックル

左「樹木図鑑」山田隆彦監修 池田書店
右「ハーブ図鑑110」レスリー・ブレムネス 日本ヴォーグ社

右写真のハニーサックルは学名 Lonicera caprifolium
ヨーロッパや北アメリカに自生する一般的な種



「あまい香りのツインで咲く白花と黄花のまざった木があるんだよ」と教えてもらい、「スイカズラ」なるものをたずねてドライブをしたのは数十年前。


アロマテラピーを学びはじめて夢中になっていたころでもあり、日本の国土にふるくから自生するハーブで、野草のものがあると聞けば東へ西へと走りまわっていた時期でもあります。


はじめて出あった すいかずら の花は狐の顔のようにみえて、宵口から芳香がつよくなるあまい香りにつつまれると、からだがシュゥッと筒みたいに細くなり、大気に吸いこまれるようだと感じていました。


ドライブ散策につきあってくれた連れは「狐というより双頭の蛇みたい」とのたまって、筒型にほそまる体感に浸っていたわたしのこころを見透かしているのかと、どきどきしました。


スイスイバナの愛称は水を吸うのでも蜜を吸うのでもなく、ヒトを(正確には肉体をこえたエネルギー体を)蛇みたいな筒にして自然界に吸いこんでしまうような、一体感や陶酔感をあらわしたものなんじゃないかと、スイスイ体験後しばらくたってから思うようになりました。


ヒトにおおきな影響をおよぼす目にみえないチカラのことを折にふれて考えるようになったころ、すいかずらの芳香はもちろん、蛇や狐、金銀まざりあってかがやくものなんかがトリガーになって、シュゥッとなる感覚やスイスイされる感覚を思いだし、やはり植物界(の野生種)にはエネルギー体におおきな影響をおよぼすチカラがあるのだろうと思うようになりました。


現代ではあたりまえの域に達した電波にしても、その存在を認める人のほうが圧倒的にすくなかった時代もあり、いまではすっかり、重力や電波は目にはみえないけれどたしかに存在し、ヒトにおおきな影響をあたえるものだという認識が共有されています。


ちかい未来には、肉体をつつむエーテル体やアストラル体などの存在が認知され、人と森羅万象につながりがあることを、各人のスペックみたいに認識する日がやってくるのだろうと(期待をこめて)感じています。


暦に動植物や自然現象をあてはめたり、方位べつに四大元素霊を拝したり、着るものやタトゥーに描かれるシンボル、氏族ごとのトーテムポールなど、宇宙や自然界につながる系譜を受けついできた民族は、自分たちの出自を知ることで地球というフィールドに存在するすべての事象に、大いなる創造主とのつながりがあることを自然と理解していったのだろうな、と。


「バッチの花療法」

「バッチの花療法 その理論と実際」メヒトヒルト・シェファー フレグランスジャーナル社


「バッチの花療法」

「バッチの花療法 その理論と実際」メヒトヒルト・シェファー フレグランスジャーナル社



ヨーロッパで一般的な種のハニーサックル(学名 Lonicera caprifolium・ロニセラ カプリフォリウム)は、イギリスの医師であり細菌学者、ホメオパスのエドワード・バッチ博士(1886 - 1936年)が考案した、バッチ・フラワーレメディ(38種の野生の花を使用した代替療法)に選ばれたハーブのひとつでもあります。


バッチ・フラワーレメディについては前記事の、
ひよどり花 https://note.com/shield72/n/n4b2e21c1468e
でもご紹介していますが、本のなかで著者は
『バッチ博士が治療に使った花は、彼の言葉によれば、より高い秩序をもった植物です。それぞれの花には、魂のある特定の性質が秘められています。それぞれの「植物に宿っている」魂はその花の種類によって異なる特定のエネルギーの波長をもっています。人間の中にある魂の性質とそれぞれ一致しているのです』
と綴られています。


イギリスを本拠地としていたバッチ博士が「より高い秩序をもつ」ハーブとして選んだハニーサックルと、日本の国造りの神である大物主大神への神饌となったジャパニーズ・ハニーサックルは、土地の風土に適応したことで微妙に変化したものの、おなじような波長のエネルギーをもっているのだろうと想像しています。



おだまき型


バッチ・フラワーレメディではハニーサックルを「過去との関係をよいかたちで存続させ、現在を生きる」波長にチューニングさせるとあります。


「心理面で過去の何かに拘泥し、臨機応変に対応することができない」人の助けになるとも。


エーテル体は糸や紐のように、いくすじもの線が集合した布や網のようなものと比喩されることがおおいです。


(いまのところ)人の目にはみえないので光より高速な繊維状のものと想像しています。


『古事記』に大物主大神と活玉依姫(いくたまよりひめ)の恋物語が記されています。


美しい乙女、活玉依姫いくたまよりひめのもとに夜になるとたいそう麗しい若者が訪ねてきて、二人はたちまちに恋に落ち、どれほども経たないうちに姫は身ごもります。


姫の両親は素性のわからない若者を不審に思い、若者が訪ねてきた時に赤土を床にまき、糸巻きの麻糸を針に通して若者の衣の裾に刺せと教えます。


翌朝になると糸は鍵穴を出て、後に残っていた糸巻きは三勾(みわ)だけでした。


さらに糸を辿ってゆくと三輪山にたどり着きました。


これによって若者の正体が大物主大神であり、お腹の中の子が神の子と知るのです。


この時に糸巻きが三巻き(三勾)残っていたことから、この地を美和(三輪)と名付けたということです。


三輪山の神語り | 大神神社(おおみわじんじゃ)


糸を紡ぎ、絡まらないようになかを空洞にして玉状(あるいは環状)にまとめたものを苧環(お・だまき)といいますが、糸をたよりに相手の正体を知ることを「おだまき型」といい、古事記のおはなしが原型になっていろいろな異類婚姻譚が日本各地に伝わっています。


布を織るためにはまず、植物の繊維をからませながらのばして(紡いで)糸にすることからはじめます。


1本の線となって生まれかわった植物の繊維は、経糸と緯糸で交差させると、布という面を生みだします。


さらに布と布を糸で縫いあわせるには針が必要で、針は魔道具のひとつとして、古い物語によく登場します。


蛇婿入り(ヘビムコイリ)とは? 意味や使い方 - コトバンク、株式会社平凡社「世界大百科事典 第2版」出典の説明では、


「針は布など別のものを縫い合わせて結びつけ、以前とは異なった新しいものを作り上げる機能をもつが、蛇婿入り譚では鍵穴や障子といういわばこの世と異界の境をこえて二つの世界を結びつけており、また、猿婿入り譚では川や橋というやはり顕幽の境をなす場所で金属の呪力をもつ針と霊魂の容器である瓢簞とで異類聟を退治している」とあります。



「過去に拘泥する」心理はいってみれば苧環(おだまき)になった状態から糸をひもとくことをせず「以前とは異なったあたらしい」境地にすすむことを拒んでいる姿勢なのかもしれません。


目にみえるものだけを信じてからだに閉じこもるのは、ご縁につながる糸をくり出さずにエーテル体を活用していないということで、それは流動的じゃないし宇宙時代の循環型とはいえず、せっかくデフォルト設定されているんだからフル活用したほうがいいよね、なんて記事がSNSに散見する日も近いのではないかな、と。


糸がほぐれてからだの周囲にひろがっていくと、おだまき型よろしく自己のたましいの出自や、ご縁のふかい神仙への象徴的事物に自然とひきよせられてゆくのだろうと思いますし、自己の出自を知ることは地球というフィールドに存在するすべての事象に、大いなる創造主とのつながりがあることを自然と理解することにつながるのだろうな、と。


わざわざスローガンを打ちたててエスディジーズとかサスティナブルとかしなくても、すべては流動しつづけ循環していることは自明の理になるのだろうと思います。


からだという苧環からぜんぶの糸が出きったら、中心部には「糸巻きが三巻きのこされて」、インドに古くつたわるクンダリニー・3回半とぐろを巻いて眠っている蛇としてつたわる、人体の基底チャクラにあるエネルギーを感じられるのかもしれません。


クンダリニーは普段は尾てい骨付近にある第1チャクラ「ムーラーダーラ」に眠っているという説明が一般的であるが、平凡な誰しもが自分でも気づかないほどの穏やかなレベルで覚醒しているというような見解もある。


伝統的な考え方におけるクンダリニー覚醒は、シヴァ神と離れ離れになり、3回半とぐろを巻いた蛇としてムーラーダーラに眠っているシャクティ女神が目覚め上昇し、頭頂部上方のサハスラーラに鎮座するシヴァ神と再結合を果たすといった描かれ方がなされる。



天にむかってらせん状にのびゆく、すいかずらの枝は糸通しした針のように布と布をつなぎあわせながら、見える高さが変わるほどの天蓋みたいなマントをつくって、わたしたちをあたらしい境地へと、スイスイ導いてくれるような気がします。



マントのお話は過去記事にも綴っています。

マントは防寒の用途もありますが、袖がついた防寒着に比べると圧倒的に魔法的な匂いのする御召物、という気配が濃厚になります。


人型サイズに分割されたとはいえ、マントを羽織るだけで人ならざるモノの気配が漂い、胴体を隠すことで隠しきれない品性や魔性、神秘性や怪しさが滲み出てしまうような。


象徴としてのマントのはじまりは、地球を覆う大きな天蓋で、古代エジプト神話に示される天空女神ヌトだったり、メソポタミア神話のアンだったりするのではないかと妄想しています。


天空という大きな天蓋は創造降下によって分割され、いろいろな神話のなかに神仙キャラクターとして登場する、と考えるなら、キリスト教に描かれる聖人、聖女も分割された天蓋マントを羽織り、持物としての布によって、元はひとつだったことを表しているのかもしれません。


【ハーブ天然ものがたり】ハゴロモグサ/レディスマントル|白木海月@Shield72°公式note


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お読みくださりありがとうございました。
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