aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

楝(おうち)/栴檀  祇園精舎の守護神

古名 おうち、あふち


楝という文字、ふだんなかなか見ることはありません。
日本の色、淡い藤色をおうち色といって、楝という漢字があてられます。
古名のおうち、あふちは、木に咲く淡い藤色の花
アワフジから転訛したという説があります。

楝の木



花の咲くころは、枝々に紫雲がかかっているように見えることから
雲見草とも呼ばれます。
花が終わってスズナリに成る実を金鈴子(きんれいし)と呼び
干したものは腹痛のための生薬になります。
また樹皮を干したものは虫下しにつかわれてきました。


耐火性、耐塩性にすぐれ、成長もはやいので
沖縄では女の子が生まれると苗木を植えて
嫁入り時の家具材にする風習もあったそうです。


小さな楝色の花は初夏に開花し、花の季節が短いことから
万葉集では亡くなった妻を想うきもちを詠んだり
「あふち」を「逢う」にかけて詠む歌が残されています。
清少納言の枕草子では、5月5日(旧暦)には必ず咲いているとされ
源氏物語には牛頭栴檀(ごずせんだん)の名で登場します。



楝の木は別名を栴檀/センダン、
学名は Melia azedarach (センダン科センダン属)です。
江戸時代まではおうち、あふちと呼称していましたが
「大和本草(1709年)」で
「和名をアフチという。近俗センダンという」と記載され
和の栴檀と漢字をあてて、センダンの名が定着しました。


そもそも栴檀は、飛鳥時代に日本に入ってきた南方産の香木の総称です。
白檀が栴檀と呼ばれる混同も、それが大きいと思います。


ヒマラヤ山麓原産とされ、日本では静岡以西に自生し
公園や街路樹として植栽されています。
楝の木は、葉を含めて除虫、抗菌作用が強く
ぼっとん便所の蓋に使用されていた記録がのこっています。
厠には楝の葉が置いてあり、用を足したあとに
葉をかぶせるように落とす風習もあったそうです。
楝の木は生活に密着した、馴染み深い木だったことがうかがえます。



祇園精舎の守護神 牛頭天王


楝の木が果たしてほんとうに牛頭栴檀(ごずせんだん)かどうかはわかりませんし
むしろ楝に栴檀と当て字したことを「唐変木」呼ばわりする意見もあって
なにがほんとうかはわからない、フシギ歴史の樹木です。


牛頭栴檀は仏典などに登場する神懸った樹木の名称です。
香木として日本に入ってきたときは赤、黒、白、紫の栴檀があるとされていました。
そのなかでも南インドの摩羅耶(マラヤ)山のものが最上とされ、牛頭栴檀(ごずせんだん)と呼ばれました。
マラヤ山の別名は牛頭山です。


日本には古く、牛頭天王をお祀りしていた社がいくつもありました。
牛頭天王信仰といえば京都祇園の八坂神社が有名です。
祇園精舎の守護神なので、牛頭天王を祭った場所は
祇園と呼ばれることが多いそうです。


1868年に発令された神仏判然令では名指しで
「権現」「牛頭天王」の神号を用いる寺社は
名前を改めるよう布告され、現代ではスサノヲ神と習合されています。


ということは出雲系であることはまちがいなく
日本全国に分社がある八坂神社をはじめとして
八雲神社や、八剣神社、八重垣神社、熊野神社
津島神社(津島牛頭天王社)
氷川神社や、須賀神社
あと出雲系タケミナカタノミコトを祀る諏訪神社
菅原道真公(も出雲の系譜だったと記憶しています)の天満宮と
江戸時代までは、日本全国津々浦々で
牛頭天王は信仰されていたようです。


牛頭天王は薬師如来を本地仏とした疫病を防ぐ神でもあり
山伏が修行するときには薬草に知悉することが必須となり
修験道者の信仰にもつながっているそうです。



平家とのつながり


祇園精舎は平家物語の書き出し
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で
日本に広まったように思います。


学生時代、不勉強だったのがバレバレですが
わたしは牛頭栴檀のことを知る前は
日本のどこか、平家ゆかりのお社を
祇園精舎というのだろうと思っていました。


(以下説明は釈迦に説法と思われますが)
祇園精舎はインドにあり、釈迦在世のころ建造された5つの寺院のひとつです。
精舎は出家修行者の住まいであり寺のことで
祇園は身寄りのないものや貧しいものを受け入れるという意味があるそうです。
いまは歴史公園に指定され、釈迦が説法を行った聖地となっています。



平家物語では、壇ノ浦の戦いで敗れた平宗盛と平清宗の父子が
京都三条河原で生首をかけられたとして楝の木が登場します。
それから江戸時代まで、罪人の首を架ける木として使用され
首をさらす台材として定着したそうです。


虫がわきにくいという理由もあったと思いますが
楝の木がかもしだす風情はおどろおどろしいものではありません。
淡い紫は浄化と癒しの色ですし、人々に愛され
重用されてきた樹木であることは確かです。


首掛けの木として、楝の木が忌み嫌われた時代もあったようですが
「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」の日本らしい精神で
楝の木を選んだのかもしれません。



出雲系の超個人的な所感


おうち色の花を、いまわの際に見ていたという
南方熊楠(みなかたくまぐす 1867 - 1941年)。
大好きで尊敬している古人のひとりです。


生前は神社合祀反対運動にも力を入れ、伐採を免れた神社林は何ヵ所かあるそうです。
ですがこのとき、かなりの社殿や、森、社叢、原生林が損なわれてしまいました。


南方熊楠さんのエピソードは、ココロ躍る冒険譚。
かってに出雲の系譜なのではないかと思っています。
「十二支考」に丑(うし)のお話だけ収載されていないのが残念です。
知の巨人の牛頭栴檀についての見解を読んでみたかったです。


「天井に紫の花が咲いている」という言葉を最後に逝去されたそうで
たぶん楝の花を見ていたのではないかな、と
これまたかってに妄想しています。



☆☆☆



お読みくださりありがとうございました。
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