aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

ベイ/月桂樹 アポロン神のサンクチュアリ

妖精ダフネの化身


ギリシャ神話の12柱神アポロンは、文武に秀でた理性的イケメンキャラとして画一的なイメージが定着していますが、だまされたり嵌められたりと、わりかしヌケサク的な神話が多いです。
そのあたりはフォーカスされず、凄腕の理想的青年像といった側面ばかりがとりあげられて、太陽神ヘリオスと習合されるまでになりました。


予言、詩歌、音楽と医療の神アポロンにまつわる化身物語はいくつかありますが、なかでも有名なのが妖精ダフネとの物語です。


エロース神(現代ではキューピッドの姿かたちで伝えられています)が、アポロンには恋に落ちる黄金の矢を、妖精ダフネには拒絶する鉛の矢を放ち、アポロンの求愛から逃げつづけるダフネは、すんでのところで月桂樹に変身したというお話です。


それから月桂樹はアポロンの聖樹となり、葉で編んだ冠は文学や芸術、アスリートや軍人など、すぐれた才をもつ人へ授ける、名誉ある月桂冠となりました。


月桂樹、ベイ、ローレル


キューピッドの矢で我を忘れて妖精を追いかけまわした、というと「なんだかなー」と思ってしまいますが、地上植物は天界につながるエーテル体の象徴、として見つめなおすと、アポロンは天界人の限界に挑戦して、地上世界ぎりぎりのところまで降りてきた、とも考えられます。


土元素にはさわれないけれど、風(木)の元素が多めだったら、なんとかつながりを保てるのかな、と。
月桂樹はアポロン・エロース・妖精ダフネが協働して、自己分割して生み出した天地のかけはし、とも考えられます。



ウィッチクラフト


古代ローマ時代、ユリウス・カエサルは自宅の門を月桂樹で飾ったといわれています。
人々は新年を迎えると、幸運に満ちた一年を祈願して友人と月桂樹を贈りあいました。
大切なお祭りがあると、教会の床には月桂樹の葉が敷きつめられたといいます。


中世ヨーロッパでは月桂樹の小枝を教会に飾ると、妖精や小人をお招きできると信じられていました。
魔女がつかう空飛ぶほうきは月桂樹でつくられる、という説もありました。
(現在では一般的にはエニシダ、ハリー・ポッターではマホガニーなんだそうです)


現代にも伝わるウィッチクラフトには、赤ちゃんの抜けた歯をサクランボの種といっしょに月桂樹の葉にくるんで身につけると、周囲の人々の言動がやさしく、あたたかいものに変わるというおまじないがあります。
枕の下に月桂樹の葉を入れて眠ると、未来を予言できるとも。


月桂樹のハーブ・バスは筋肉の疲れをいやし、血行を良くしますが、古代ローマ時代にも同じ用法で使用されていました。


香辛料としても古くから利用され、葉を乾燥したローレルは現代社会でもキッチン・マスト・ハーブとなり、カレーやシチュー、ポトフなど、家庭料理に欠かせないものとなりました。


月桂樹にまつわるさまざまな用法のうち、とりわけ昔の人々が強く信じていたのは、雷や稲妻から身をまもってくれるということです。
「遠矢射るアポロン」として、地上に向けて放つ矢で、人間を虐殺する能力をもっているけれど、月桂樹のある場所には矢を放たないのかな、と。
鋭い矢の一撃を雷と考えるなら、月桂樹はアポロン神のサンクチュアリとして、雷神さまからも一目おかれているのかもしれません。



もうひとつの化身物語


ヒヤシンスは和名、風信子、飛信子と表記し、原産は地中海東部沿岸(トルコ、シリア、レバノン、イスラエル)、イラン、トルクメニスタンとされています。
オスマン帝国時代には園芸種として栽培がはじまったそうです。


ギリシャ神話では、ヒュアキントスという青年と恋仲だったアポロンが、ふたりで円盤投げをして遊んでいるところに、西風の神ゼピュロスが突風を起こし、アポロンが投げた円盤がヒュアキントスの額を直撃して死んでしまいます。
ヒヤシンスはこの時に流れた血から生まれた植物、というお話です。

photolibrary


西風ゼピュロスはアフロディーテだけじゃなく、アポロンにもいっちょかみしているんですね。
アポロンは、もとは小アジア(現在のトルコ、アジア側)で信仰されていた神だったとか、植物の精霊神から牧羊神になったとか、北方の遊牧民信仰神だったとか、諸説あって出自が複雑ですが、土着の神様を習合して、信仰心によって人々を治めるという手法を成功させたシンボルでもあるのだと思います。


いろいろな土地神様の習合と考えるなら、天地の梯子もあちこちに必要なのかもしれません。



☆☆☆



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