aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

アネモネ 風のきざはし

風の神アネモイ


アネモネの和名は
牡丹一華(ぼたんいちげ)
花一華(はないちげ)
紅花翁草(べにばなおきなぐさ)


英名をWind flower(ウィンドフラワー)といい、ヨーロッパから地中海沿岸を原産とする、キンポウゲ科の植物です。
学名 Anemone の語源は、ギリシャ語で「風」を意味します。

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ギリシア神話に登場する風の神たち(東西南北)を総称してアネモイと呼び、あるときは一陣の突風、あるときは翼をもった人間、またあるときは馬として登場します。


アネモイには下位の神として
北風ボレアース
南風ノトス
西風ゼピュロス
東風エウロス と、4方位に神格があり、あばれん坊、実りを運ぶ、春を告げるなど、それぞれ特徴があります。


イタリア、ルネッサンス期の画家ボッティチェリは、春の訪れを告げる風神、西風ゼピュロスを「ヴィーナスの誕生」と、「プリマヴェーラ」に描きました。
無垢、花、誕生、喜び、純粋さ、美しさなどがテーマになっており、楽園と西の風神はいつもセットで描かれます。



アネモネ誕生神話は化身物語。
ひとつは女神アフロディーテに愛された青年アドニスが流した血がアネモネになったというお話。
もうひとつは西風ゼフィロスが妖精アネモネに恋をして、妻である花の女神フローラがアネモネを天界(妖精界)から追放し、行き場を失ったアネモネを、ゼピュロスがアフロディーテに頼んで花に変えてもらったというお話です。


化身説はギリシャ神話によく登場し
マートル(ぎんばいか)
ベイ(月桂樹)
ミルラ(没薬)
ミント
マリーゴールド(キンセンカ)
スイレン
スイセン
ヒヤシンス
などなどが思いあたります。


妖精ミンテ変化魔法のお話はこちらの記事にも




化身


妖精や半神、人間が植物に変身する物語の背景には神様とか太陽などの上位存在がいて、変化魔法を発動します。


たいていは嫉妬や復讐などが絡まった愛憎劇に仕立てられ、非業の死とか悲恋の物語として語られます。
けれど地上界での植物の繫栄・愛されぶりを思うと「ほんとに復讐?」と、ハテナマークが飛び交い、目がしばしばしてしまいます。



化身となった植物は、変化魔法を発動した神々の分身。
地上に渡りをつけるための、神々の創造物なのだろう、というのが個人的な所感です。


西風ゼピュロスは花の女神フローラとともに「ヴィーナスの誕生」に描かれています。
海から誕生したばかりのアフロディーテを楽園へと運んだ風・花の神が、美の女神とともに創造したのがアネモネの花なんだろうな、と。


天界と地上界の梯子についてはこちらの記事にも



青年アドニスの流した血がアネモネになった説では、猪が絡んできます。
アドニスが誕生したのはミルラ(没薬)の木から。
猪突猛進した猪がぶつかって、木が割れ、なかからアドニスが誕生します。
女神アフロディーテと冥界の女王ペルセポネがアドニスを育て、成長したアドニスは狩りが好きな青年となります。
アドニスが狩りをしているときに軍神マルスのけしかけた(変身したとも)猪に殺されます。


誕生と死に関わった猪と、狩猟が好きだったアドニス。
狩るものは狩られるもの。
つまりアドニスは猪と対なすもの(つがいのトンボ)だった、と考えています。
猪の象徴は、猛進、力と勇気、血わき肉おどる肉体があればこその切磋琢磨。
アフロディーテはアドニスの祭壇に、フェンネルをふんだんに使ったという後日談があります。
地上の花として根付くよう、タマシズメ的な意味があったのでしょうか?


シシ神様と猪のお話はこちらの記事にも

フェンネルのお話はこちらの記事に



殺されるとか死んだというのは、次元が変わったということで、変化そのものを象徴しています。(もちろん誕生も)


アネモネの化身物語を占星学象徴にあてはめてみると
女神アフロディーテは「金星」
西風ゼピュロスは太陽の沈む「ディセンダント」
冥府の女王ペルセポネは「さそり座、8ハウス」
猪をけしかけた軍神マルスは「火星」


金星と火星「女性性と男性性」が統合されると
さそり座、8ハウス「死の向こうがわ、異界」の門が開いて
ディセンダント「地上界のゴール、目的地」にタッチできる。


アネモネの花を目印にして、風の精霊たちに運ばれながら、天地をつなぐアフロディーテのきざはしが降りてくる。
ついでにいうと軍神マルスは猪の血のなかに、きざはしをもっているのではないかしらん。



キンポウゲのお座布団


アネモネと同じキンポウゲ科の花、フクジュソウ(福寿草)は日本に自生する春告草(福告げ草)のひとつです。
学名は Adonis ramosaと、アドニスの名をもっていますから、もしかするとキンポウゲ科の植物全体がアドニスの化身で、アフロディーテの降臨用お座布団になっているのかもしれません。


福寿草は縁起のよい植物として、元日草とも呼ばれます。
字面を見ていると、七福神の福禄寿や寿老人をイメージしてしまいます。
南極老人星、恒星カノープス(りゅうこつ座アルファ星)の化身とされる神仙2柱。
眷属の鹿(シシ神様)をおともにしていることや、アネモネの和名に、紅花翁草(べにばなおきなぐさ)とオキナの文字がついているあたり、なにかしらの関連がありそうだと好奇心がむくむく湧いてきます。


ちなみにキンポウゲ科の植物は、ウマ(ウシ)ノアシガタとか、キツネノボタン、小さなカエルとか、好奇心をくすぐる種がいっぱいです。



☆☆☆



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