aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

くちなし/ガーデニア 勝負ごとに口出し無用

日本の黄色


たくあんや栗きんとんなどに
天然着色料として古くから重用されてきた日本の黄色。


くちなし(梔子)の果実からとれる色素は
カロチノイド系のクロシンで
サフラン(パエリアの色)も同じ色素をもっています。


photolibrary



食べ物以外でも、くちなしの乾燥果実で布を染める手法は
平安時代の十二単にも使用され、支子色(ししいろ)と呼ばれます。


古今和歌集より


「山吹の 花色衣 主や誰 問へど答へず くちなしにして」 素性法師


山吹色の衣、おまえの主は誰、と聞いても答えない

口無しという名のクチナシで染めたものだから



「耳なしの 山のくちなし えてしかな 思ひの色の 下染めにせむ」 読み人知らず


耳なし山(奈良の耳成山)のクチナシの実が欲しい、下染めにそれを使って、誰にも知られぬ思いを(火の色で)染めるため

(耳なし口なしで、誰にも知られぬ思い)



くちなしの染め物は、黄色に赤をうっすら混ぜたような、山吹の花色に近いです。
江戸時代には「口無し」という名から、不言色と呼ばれていました。


実が熟しても割れないことから口無しと命名された説が有力ですが
ビロードのような白い花のたたずまいは
「秘すれば花」をそのまま体現しているかのようで
香る和花の女王の御前では、おしゃべりも自然と止まってしまう。
くちなしの花咲くあたりいちめんに
馥郁とした香りとともに静謐な気配が漂います。



くちなしの実を乾燥したものは山梔子(さんしし)と呼ばれ
10月から収穫がはじまります。
活用方法は染料や着色料のみならず
日本薬局方にも収載された生薬で
炎症を抑えたり、利尿や止血、鎮静・鎮痙効果があるとして利用されています。


民間療法では、打撲、捻挫、腰痛に
山梔子を煎じた汁を冷まして冷湿布することで
熱を散らし、炎症を和らげるとして活用されてきました。



香る白い花


昭和のヒット歌謡曲にもなったくちなしは
英名でケープジャスミンと呼ばれます。
花の香りがジャスミンのようだから
そして原産がアフリカのケープと勘違いしていたから、だそうです。


梔子


くちなしの原産は東アジア、日本では静岡県以西の温かい地域で自生します。
園芸用として品種改良された八重咲の花(果実をつけない)のほうが
市場に流通しているので街中でよく目にします。


学名は Gardenia jasminoides(ガーデニア ジャスミノイデス)
アメリカではガーデニアの名で知られています。


ビロードのような質感、大輪の八重咲き、白いくちなしの花は
アメリカのジャズシンガー、ビリー・ホリディ(1915年-1959年)が
髪飾りに愛用していたシンボル・フラワーです。
最近公開された映画
「ユナイテッド・ステイツvsビリー・ホリデイ」の一場面でも
髪に飾られた白い花が印象的でした。


代表曲の「奇妙な果実」を、当時公の場で歌うことは
そうとう勇気のいることだったと思います。
人種差別制度、時代のマジョリティ、体制派に屈することなく
言の葉をたいせつに表現している音楽は、いつ聞いても心を揺さぶります。



白い花は光の色波長を吸収しないのが特徴ですが
くちなしや、ビターオレンジの花ネロリ
エーデルワイス、白木蓮やこぶし、タイサンボクの花など
花弁がポテリンとした独特の白色を醸す花々は
光を反射せず吸収しているような存在感があります。


清廉潔白な白、に対して
太白金星の白、みたいな感じです。


白い花、というと可憐ではかなげ
もしくは高潔さや気品があり、「守ってあげたい」とか
「お守り申し上げる」的なキモチと連動しやすいですが
太白金星的な白は逆に、こちらをつつみこむような頼もしさがあり
見ているだけでほぉっと一息、深い吐息を誘います。


だいじょうぶ
かっぽうぎ
大福餅
金星
絹のビロード
お蚕さんの羽
太陽光線の繊維
羽休め
白鳥
ちゃんと受け止める
どんとこい
つつむ


くちなしの白い花、くちなしの香りマインドマップに書き込まれた言の葉です。
もちろん香水やフレグランスなどの合成・人工的につくられた香りではなく
精油の香りを使いましたが
水仙とおなじで、水蒸気蒸留法による採油はできない香りなので
溶剤を使ったものしか手に入りませんでした。
なので山野に自生するくちなしの花から受ける印象とは、若干ちがうと思います。


くちなしは沈丁花、金木犀とならんで日本三大香木のひとつ。
なかでも日本の野生原種はくちなしだけです。



勝負ごとに口出し無用


将棋や囲碁の磐は
脚の形がくちなしの実をモデルにデザインされているという通説があります。
対局中に口を出すな
人の勝負ごとに口出し無用
という戒めを表しているそうです。


盤の足 くちなしの実


将棋や囲碁のことはよく知らないのですが
四つ隅をくちなしが守っているなら
日本らしい戦いぶりになるんじゃないかと勝手に思っています。


将棋のことは「三月のライオン(マンガ)」を読んだので少しわかります。
相手の駒をとって、その駒を殺さず
自陣でまた生かす(指す)ことができるのは
カッコいいルールだなぁと思っています。


勝敗を「詰む」「詰める」と表現するのも
勝ったり負けたりに終わりがなく
相手を負かすことが目的じゃないんだってことを表しているようで
研鑽しつづける棋士/騎士って感じが伝わります。


真剣勝負をくりかえしつつも
同じ力量で戦える相手がいることを逆に喜ばしいこととして
たがいに切磋琢磨する関係性を保つのは
並大抵のことではないのでしょうけれども。。


くちなしは、勝っても自慢せず
負けても言い訳しない
研鑽をつづける奥義として
その名がついたのでは(とは勝手な解釈)と、思っています。



☆☆☆



お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。


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