aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

水仙 水の仙人

春告草


ヒガンバナ科ナルキッソス属(スイセン属)
花は冬から春に開き、水の仙と書いて、水仙。
俗名を雪中花、または雅客といいます。
*雅客は風雅を愛好する人、風流人という意


水仙



2月は立春、とはいっても北海道ではまだ雪深く
30cm先も見えないホワイトアウトになる吹雪、地吹雪はざらに起こります。
それでも雪の少ない、暖冬とよばれる年には、小春日和の陽だまりに、雪どけがはじまって、水仙がちらほらと開きはじめます。


春分すぎて3月も終わるかな、という頃に、きまってドカンと雪が降り積もり、ママさんダンプ(雪かきの道具)を物置にしまったことを悔いながら、なごり雪、わかれ雪、ましてやあわ雪などという、ふんわりイメージの真反対、水をたっぷり含んだおもたいベタ雪を、スコップ一本でわっせわっせと「かきなぐる」。


水仙がある場所をおぼえておかないと、雪といっしょに「かいて」しまうので、小春日和が数日続いたら、水仙がどこいらで芽吹いたかを確認するのが日課でした。
*雪をかく、かき、かいて は、方言かもですね、雪をどけるという意味です。



水仙の開花期は12月~5月頃といわれています。
原産地は地中海沿岸からアジア中部(一般説)、カナリア諸島原産という絞り込んだ説もあり、原種は30種類ほどが認定されています。


ギリシャ神話でナルキッソスの変化物語が伝えられてきたことを考えると、3,000年以上前からヒト世界とのつながりはあったのかな、と。
仙人は道教の思想なので、アジアでも2,000年以上まえには水の仙人として咲き誇り、その名で呼ばれていたのかな、と思います。



雪どけの香り


水仙の花はジャスミンのような甘さに、スパイシーさと、ほんの少し土っぽい匂いが混ざった芳香で、溶剤をつかって採油した精油もちらほら市場に出てきました。


あくまで所感ですが、精油の水仙は推薦できません。
水仙はフローラル調のなかに、瑞々しく刷新された土と水の調べがただよう雪どけの香り。
そんな超私的記憶が固定概念になってジャマしているだけ、とも思うんですがw


雪がとけたあとは、大地がさっぱり浄化され、それでいて栄養を満点補充したかのような、やる気満々の土が見え隠れします。
雪どけ水が浸透した、若々しい土の香りは、雪国だけのもので、その思い出を精油に求めるのは土台無理なはなしです。
それでも「水仙の香り」というと、土の眠りから目覚めた、生まれたての水精霊の香りを含んでいるような気がして、溶剤抽出された瓶づめの香にはなかなか興味をもてずにおります。


「其のにほひ 桃より白し 水仙花」 松尾芭蕉


桃の香りも、食べたらわかる、ほんとうの香りというのがあって、市場に出回っている合成の桃香には、生きた精霊の気配がないというか(なんというか)。


植物の香は、せめて水蒸気蒸留法で、まんまのスピリタス、生命のエリキシルを感じられるものであってほしい(いちアロマニアのボヤキです)。


水仙はミドルノートですが、拡散性の強い香り成分、酢酸ベンジルをもっているので、大地に群生しているだけで香気が遠くまで届きます。
酢酸ベンジルをもつ花は、ジャスミンやイランイラン、クチナシなどが有名です。




ナルキッソスはナルシスト?


盲目の予言者テイレシアスは「己を知らないままでいれば、長生きできるであろう」と予言した。


ナルキッソスは、そんな宣託をうけて成長しました。
以下、ウィキペディアから要約します。

森の妖精エコーが彼に恋をしたが、自分の言葉を発せない呪いを受けており、相手の言葉を繰り返す以外、何もできなかった。

ナルキッソスは「退屈だ」としてエコーを見捨てた。

エコーは悲しみ姿を失い、声だけが残って木霊になった。

義憤の神ネメシスは、ナルキッソスが自分だけを愛するようにした。


ムーサの山にある泉でナルキッソスが水を飲もうとして水面を見ると、美しい少年(本人)がいた。

そのまま水の中の少年から離れることができなくなり、やせ細って死んだ。

水面に写った自分に口付けをしようとしてそのまま落ちて水死したという話もある。

ナルキッソスが死んだあとそこには水仙の花が咲いていた。


この伝承から、スイセンのことを欧米ではナルシスと呼ぶ。また、精神分析の用語ナルシシズム(narcissism)という言葉の語源になった。


現代のナルシストという概念は、自己愛のことを言いますが、それは人から注目を浴びて称賛されたり羨ましがられたりしなければ成立せず、ひとりぼっちで泉(現代なら鏡)を見つづけて死んでしまったとなると、うぬぼれたナルシストとは言えないんじゃないかな、と思います。


自分に恋して酔いしれる、ナルシスト気分の裏側には、まわりも自分を見ている、注目して酔いしれている、という思い込みがセットになっていて、妖精エコーのようなとりまきがいるのなら、退屈どころか自己確認のよすがとなって、手放すことはしないんじゃなかろうか、と。


現代版ナルシストは自灯明ではなく、自分で自分を信じるために、他者からの認知がどうしても必要です。
自分で真実かっこいいと思うことを追い求めるのではなく、人からかっこいいと思われるにはどうしたらいいか、が基準になっているので、真逆といってもいいくらいです。
ナルキッソスはエコーとの相互依存をきっぱり断ち切って、真実の己を追い求め、水面を見つづけたのではないかと思うのです。



壁面にむかって9年間座禅し、仙となった達磨大師。
ナルキッソスの物語を読んだとき、思い浮かんだのは達磨さんでした。
かれこれ数十年前の話ですが、「水仙に化身したナルキッソス」というオチだけでも、仙人修行してうまくいったんだなぁと思い、鏡を見るエネルギーワークってたしかどっかで聞いたことあるなぁ、と連想が続き、数日後にはワークショップを探して出かけてゆきました。


それは「私は誰?」と問いながら鏡を見るシンプルなメソッドで、目線をぼやけさせる練習とか、オーラを感じる練習など盛り込まれて、自意識の鎧をとっぱらうために、だだっ広い体育館で好きなようにからだを動かして、踊ったり飛んだり跳ねたりしたのは、とても楽しい体験になりました。



「己を知らないままでいれば、長生きできるであろう」
という予言者の宣託を、かの有名な大魔女ババヤーガ風にいうのなら
「宇宙の秘密を知りすぎると早く年を取ってしまうんだよ、そして早く死んじまうんだよ」となります。


アイデンティティは意識と記憶の連続性で強化される、とするならば、預言者や大魔女が仄めかす「死」とは、過去生から現在、未来世にいたるまで、すべての記憶を取りもどしたら(宇宙の秘密を解き明かしたら)肉体はもう必要なかろう、ってことではないのかな、と。


アイデンティティと記憶の連続性についてはローズマリーの記事に



大魔女ババヤーガはラベンダーの記事にも



ところで水仙て、ラッパスイセンがあるくらいラッパに似ています。
眠り込んだ魂を呼び覚まし、クンダリニに眠るシャクティを目覚めさせる、ガブリエルのラッパのように、現代脳では受けとれない音を奏でているのかもしれません。


森のなかでは、水仙の響きに即レスするエコー(木霊)がいて、目覚めの響きを増幅し、変性意識に入りやすくしてくれているのではなかろうか、と。


ラッパのオブジェ





☆☆☆




お読みくださりありがとうございました。
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