aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

火の精霊 サラマンダー

いまはむかし、四大精霊のおはなし


土・水・風・火の四大元素のなかには、ヒトの目に見えない超自然の生きものが棲んでいる、と長いあいだ考えられてきました。


四大元素をつかさどる4つの精霊・元素霊は、英語表記で elemental spirits(エレメンタル・スピリット)。
ウォッカやジン、ラム、テキーラなど植物を蒸留してつくられるお酒はスピリッツと呼ばれます。
お酒は植物のエレメントを抽出した飲みものなので、スピリット、スピリタスなどと呼称されてきました。


四大精霊は草木のみならず、動物、人、無生物、人工物など、地球上に存在する森羅万象のすべてに宿っている超自然的な存在と考えられています。
万物の根源をなしている、といっても過言ではありません。



 elementals(エレメンタル)は、エーテルのみで構成されたからだをもつ自然霊であるとして、パラケルススは「霊でも人間でもなく、そのどちらにも似た生きた存在である」という記述を残しています。


パラケルスス

スイス生まれ、本名テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム(1493 - 1541)

「医学の祖」と呼ばれる医師、化学者、錬金術師、神秘思想家。

研究、実験、執筆と放浪の旅で、生涯のほとんどを過ごした。


錬金術(いまでいう化学)を飛躍的に発展させた人物。

当時は型破りだった思想と行動により、聖域的な教条(ドグマ)と戦いながら、すべてを議論し直そうとした結果、多くの敵をつくり、人生は争いの連続となり、存命中に執筆したものが世に出ることは少なかった。


ただし民衆の口伝えで錬金術師としての名声は高まり、伝説化し、さまざまな武勇伝が残っている。


1、「賢者の石」を生成したという典型的な伝説の一つ。

2、「ホムンクルス」(人造人間)の生成に成功した。

3、常に剣(杖)を身につけ、柄には「Azoth」と書かれていたので「アゾット剣」と呼ばれ、賢者の石が入っていたとも。


漫画ハガレン(鋼の錬金術師)をアニメで見たとき、パラケルススの気配が充満していて、個人的にはすごく楽しめました。



火の精霊サラマンダー


サラマンダーは四大精霊のうち、火を司る精霊で、炎のなかや溶岩を棲家とする、小さなドラゴンの姿で描かれることが多いです。


ドラゴン・竜・龍は、西洋発のお話では、ほぼほぼ悪役設定ですが、東洋では眷属や神そのものとして、お守りや縁起物に象徴されることも多いです。
どちらにしても畏怖の頂点にたつエレメントであることはまちがいありません。


どれほど現代社会の合意的現実にどっぷり嵌ろうとも、妖精や精霊ということばにアレルギーを起こそうとも、火のスピリットは一瞬にして人を虜にする魔法を発動します。
焚火や暖炉の炎はもちろんのこと、小さなろうそくの炎にさえ、わたしたちは畏敬の念を抱かずにいられません。


火の精霊サラマンダーはドラゴン、竜、龍という普遍的な型となって、現代社会にも息づいています。



代表的なドラゴンお歴々


・ウロボロス
古代から伝わる象徴、自分の尾をかんで環となったヘビ・竜。


・ケツァルコアトル
アステカ神話、羽の生えた蛇神。


・ククルカン
マヤ神話の至高神、羽をもつ蛇神。


・ファイヤー・ドレイク
ケルトに伝わる火竜、炎をまとい、空を飛び、火を吐き、溶岩やマグマのなかを泳ぐ。


・中国に伝承される龍
紀元前5000年頃の遺跡から龍の塑像が見つかっているそうな。


・ヨルムンガンド
北欧神話の大蛇、人間界をぐるり囲んで尾をくわえることができるほどの大きさ。


・ワイバーン
イギリスの紋章に使われる、赤く長い舌を出し、炎を吐く緑龍。


・ナーガ
インド神話、神聖な蛇神、仏の教えの守護神、竜王。


・テュポーン
ギリシャ神話、肩から百の蛇の頭が生え、鳥の翼、蛇の下半身をもつ火を吹く毒蛇。


・エキドナ
テュポーンの妻で美しい女性の上半身をもつ羽の生えた大蛇。
ケルベロス、ヒュドラ、キマイラ、スキュラ、オルトロス、ラドンなどなど、著名な怪物たちの母。
小惑星テュフォン(Typhon)とその衛星エキドナは、海王星の公転周期あたりをめぐっています。


・バジリスク
メドゥーサの首から滴り落ちた血から生まれた蛇の王、息にふくまれた毒で石をも砕く。



・ラドン、ヒュドラ(ギリシャ神話)と
・日本の神社仏閣に伝わる龍伝説のひとつ九頭龍、
そして八岐大蛇(やまたのおろち)伝説はこちらの記事に紹介しました。



炎と竜にまつわる植物たち


竜胆(りんどう)は秋の風物花。
ここ数年で野生種を見かけることは少なくなりました。
竜胆は生薬名で、根がたいへん苦いことから竜の胆と形容されたのがはじまりです。

竜胆




竜脳菊(りゅうのうぎく)は野菊のひとつ。
秋も深まったころに花を咲かせます。
葉と茎に精油成分をもち、すっきり爽やかな香りがします。
竜脳という名は、フタバガキ科リュウノウ樹の、樹脂の香りに似ているから付いたそうですが、竜脳の主な香気成分はボルネオール、竜脳菊は樟脳(カンファー)の方が多めです。
ボルネオール、カンファ―ともに、ローズマリーやタイムの香りを想像するとわかりやすいかと思います。

竜脳菊




エストラゴンはフランス語で小さな竜。
白ワインによく合うハーブ、タラゴンです。
疲労回復に、強壮剤に、毒蛇にかまれたときの痛み緩和に、古代から活用されてきました。
アニスによく似た香り成分、エストラゴールをもっています。


エストラゴールはバジルの代表的な香気成分でもあり、バジリスクはバジルの学名でもあります。
ちなみにアニスの香りはアネトール(専門用語多発、ご容赦ください)
アネトールはアニスのほかに、フェンネルトウシキミ(スターアニス、八角)の香気成分。
フェンネルの近縁種オオウイキョウは、ギリシャ神話のプロメテウスが、神から盗んだ火を隠したハーブとして有名です。


エストラゴンは学名に月と狩猟、純潔の女神アルテミスの名をもつヨモギ属。
ヨモギも多種ありますが、エデンの園を追われた蛇が通った跡に生えてきたハーブといわれています。

タラゴン




精霊はチ「血液」に降りてくる


日本には古くからアニミズム信仰が浸透しています。
トイレの神様が流行歌になり、押し入れにも神様はいて、さらには石つぶてにも、タオルにも、スリッパにさえ「神様が宿る説」を疑う日本人は稀でしょうw


生物も、無生物にも、精霊( elemental spirits)は宿っているから、人はもちろん、お道具や履物にも、きちんと誠意を示すお作法が、日本の~~道(どう)を築いてきたんだろうなぁと思います。



古代日本では精霊に満たされている様を「チ」と表現し、語尾につけたという説があります。
火の精 カグツチ・軻遇突智
岩の精 イワツチ・磐土
木の精 ククノチ・久久能智
葉の精 ハツチ・葉槌
水の精 ミツチ・水虬
野の精 ノツチ・野椎
潮の精 シオツチ・塩椎



精霊が自然現象やいきものとしてあらわれた場合も、同じように
イカヅチ・雷
オロチ・蛇
と呼びました。


精霊は人や、人のつくった人工物にも宿って、その力を示すと考えたので
タチ・刀
などの言葉が生まれたとも。


精霊の力が満ちるとは、血液の「血」に関係すると信じられていたことから、「チ」と呼んだそうですが、精霊(elemental spirits)をエーテル体生命とするならば、血液はエーテル界とのつなぎ、そのものなんですね。



「チ」で終わるコトバは、ほかにもいろいろありますが、
蜂、餅、吉、口、道、父、乳、なども、精霊(エーテル成分)に満たされたチカラをもっているんだろうなぁと思います。



☆☆☆



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