aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

ラベンダー 植物界の羽衣天女


洗い清める


lavoー洗う という語源からラベンダーと呼ばれ、古代ローマ・ギリシャでは沐浴剤・入浴剤として親しまれてきたラベンダー。
一面紫の花畑は、夏の風物詩として現代日本でもすっかり定着しました。


ローマ人は特にラベンダーの消毒作用を尊び、創傷を洗い清めるのに使用していたといいます。ローマの女たちはラベンダーオイルで頭皮をマッサージし、ノミがつかないようにしたり、花束を柱に吊り、家のまわりにまいて虫よけにしていました。


イギリスでは古くからせっけんの材料だったことから、洗たく女をラベンデレ(lavendre)と呼んでいました。



洗たくが象徴するもの


洗たく女といえば日本では久米の仙人のお話を思い出します。
コトバンクのデジタル大辞典の説明では、
「伝説上の仙人。大和国の竜門寺にこもり空中飛行の術を体得したが、吉野川で衣を洗う女の白い脛はぎに目がくらんで墜落。その女を妻として世俗に帰った。のち、遷都の際、木材の空中運搬に成功して天皇から田を賜り、久米寺を建立した。「今昔物語集」「徒然草」にみえる。」とあります。


空飛ぶ仙人をミツバチと例えるなら、ラベンダーが洗たく女というところでしょうか。
ミツバチをひきつけてやまない香りを放ち、引き寄せ、その後ラベンダーの花粉をミツバチの身にまとわせ、ミツバチはラベンダーのエッセンスとともに地上から空に飛び立ちます。
空を自由に舞い飛ぶミツバチと一蓮托生のラベンダーは、ミツバチに受粉してもらうことで次世代へ生命をつないでいきます。


空飛ぶ仙人も、ミツバチも、地上に降りることができるのは、降下場所を示してくれる洗たく女やラベンダーのおかげ、と考えます。
地上ならどこにでも降りられるわけじゃなかろうと。
そして最後はいっしょに天を舞い飛ぶことになるので、天地を自由に行き交う特別な力を、互いの力を合わせて発揮するのだろうと。


ラベンダーの香りがもたらす「洗い」「清め」「静観し」「蘇生する」という、まいど通過儀礼のようにもたらされるきもちの変容は「リリース」という言葉がしっくりきます。
心が洗われたように浄化され、解放され、鼻歌交じりに空も飛べるはず~と口ずさんでしまうような。


天から地上に、あるいは地上から天に、まるでヤコブの梯子(天使の梯子)のような渡りがついて、かろやかに空中散歩する気分、最上級の解放感。
ラベンダーの香りがもたらす最上級「リリース」は、地上のこまごまとしたやり取りから派生する重たい気配を一瞬で洗い清めて、浄化してくれるような頼もしさがあります。



七天女伝説


久米の仙人の男女逆バージョンのような七天女伝説では、天女はその身にまとう羽衣で天を舞うことができるわけですが、沐浴中にこの羽衣を奪われて天に戻れなくなり、地上の男性と婚姻します。
地方によって、あるいは国によって、いろいろな結末があるので結びの部分は割愛。
天地を結ぶ伝説、口承されてきた逸話の受取りかたはさまざまですが、地上に降りる場所を見つけて、往来できる仙人とか仙女がいる、というところが一番肝心な話のキモなのではないか、と考えています。


人間界に近づくことのできる天界種族がいて、夫婦になって地上生活を経験して、最後はともに空を飛び、天地往来が自在にできるようになる、と。
「地球生活にはそんな選択肢もあるんだよ」
かなり荒唐無稽でロマンチックな受け取り方をしていますが、個人的にはこれ一択ですw


天界から梯子を下すときも、地上から天に向かうときも、足場はとても大切です。
わたしの場合、
足場=川べりの洗たく女=沐浴中の天女=ラベンダーの咲く野原
という方程式が、あたまのなかでデキアガッテおり、
古今東西、ラベンダーの人気の高さを考えると、ラベンダーはハーブの中でも、より人に近いところまで降りてきた、植物界の羽衣天女なのかしら、と思っています。



洗たくにまつわるお話もうひとつ


ロシアの民話で有名な魔女ババヤーガが、少女ワシリーサ(またはヴァサリッサ)に洗たくをさせるくだりにも、洗たくが一つの儀式、イニシエーションであることが描かれています。


着物はペルソナで、周囲の人が自分を見るときの最初の姿を演出します。
それは人に知ってもらいたい面だけを見せる、ひとつのカモフラージュともいえますが、同時に地位や権威、評判を表にさらし、自分が何者であるかを外に向かって示す魔道具にもなります。


ババヤーガの着物をワシリーサが洗うことで、そのペルソナがどのように縫い合わされ、どんな模様をしているのか、直接自分の眼でじっくりと静観し、大魔女の力と権威の仕組みを自分のなかに取り込んでいくことができるというわけです。


水に浸し清めることで、着ているうちに弱まってしまった布の織目や模様をもう一度浮かび上がらせることは、大魔女の観念や価値観を再生して、明るみに出すことでもある、と。


「洗う」「清める」「静観する」「蘇生する」この一連の洗たく儀式はまさにラベンダーの香りがもたらす十八番といえます。



人類への貢献度も


ラベンダーは秀逸な香料として、歴史にたくさんの逸話が残されています。
香水のメッカとして有名なフランス・グラースでは、皮手袋の香りづけにラベンダーオイルを使用していました。
手袋職人が当時の流行病(ペスト)に罹らなかったので、ラベンダーを持ち歩くことを皆にすすめたお話は有名です。


現代アロマテラピーの成立も、化学者が実験中に指にやけどを負い、ラベンダー精油を塗ったところ驚くほど治りが早かったため、精油の薬理作用について研究を始めたことがきっかけとなっています。 
とはいっても、ラベンダーのもたらす薬理作用は、もっと古くから認められていました。
ラベンダーの特徴に言及し、その素晴らしさを説いてきた著名人はシェイクスピアをはじめ、ルドルフ・シュタイナー、ヒルデガルド・フォン・ビンゲンなど枚挙にいとまがありません。



釣は詩とどこか似ている


17世紀に活躍したイギリスの著作家アイザック・ウォルトン曰く「私はラベンダーの香りがするシーツのある家にずっといたいと思う」と書き残しました。
釣りの本で有名な作家さんですが、ラベンダーの香りがもたらす静謐さ、心休まる静寂は、釣りに通じるものがあるのかなと思います。
アイザックさんは釣りと詩を引き合いに出していましたが(釣は詩と、どこか似ている)、どちらも静寂で孤独な時間を創出する達人でなければ楽しむことはできないものですから、ラベンダーの香りにいつも包まれていたいというのは、寡黙な釣り人にぴったりという気がします。



ラベンダー&ローズマリーの組み合わせしか勝たん


夏の暑気払いに、毎年恒例で持ち歩いているアロマスプレーはラベンダー&ローズマリーの組み合わせです。
ローズマリーとラベンダーの組み合わせときたら、トマトにバジルがいるように、はちみつにシナモンがいるように、梅に鶯、松に鶴、唐獅子牡丹、竹に虎。
まさに王道のなかの王道マッチング。
もしも王道ランキングがあったら、まちがいなく上位に食い込むであろう組み合わせ、と思っています。


わたしは道産子なのですが、はじめて体験した大阪の猛暑は、ローズマリーチンキにラベンダー精油を入れたスプレーで乗りきりました。
生まれて初めて味わう、汗腺から噴き出す自分の汗の量におののき、「自分の汗で溺れるんちゃうかー」と、覚えたてのへたくそ関西弁はろれつがまわらず、目はうつろになり、呼吸は荒く細くなり、なんというかもう、人のカタチを保つだけで精一杯です…みたいな気分になったときに、ラベンダー&ローズマリー水をシュッとひとふき。
爽やかな芳香で視界がひろがり、すぅっと頭も胸も軽くなり、と同時にべたべたの皮膚にまとわりついていた大量の汗による重い鎖を断ち切ってくれるような解放感で気分一新。


このスプレーで乗りきった大阪の猛暑もすでに4年目に突入。
今年も頼りにしています。



未来につなぐ製品を


いま取り組んでいる仕事のはじまりは2020年。 
それは世の中が大きく変化した年です。
あらゆることに、人に、モノに、ソーシャルディスタンスが求められ、わたしたちは新しい生き方を余儀なくされました。
オートマティックに流れる日々のルーティンは突然止まり、あたりまえと思っていた常識をなんども上書きし​、人に対してはもちろん生活を取りまくモノに対しても新しい価値観が必要になりました。


そして多くの人が人生の質 Quality Of Life(クォリティ・オブ・ライフ) について真剣に考えるようになったのではないだろうか..という見解で開発チームメンバーは一致しました。
皮肉なことにパンデミックという不安や恐怖心のなかで、メメントモリが身近なテーマとなり、死に向かって最大限に生きるということを、ようやっと考えはじめた、ともいえます。


「いまだけじゃない、お金だけじゃない、自分だけじゃない」


日本の未来を明るく希望のもてる社会にするために、自分にはなにができるんだろ?
そんなことを、しずかに、けれど強く熱く、一人一人が考えはじめたような気がします。


自然と生きる、自然に生きる。
世界を見渡すと、たべもの、洗うもの、お肌に塗るものなど、からだに取り入れる製品の質はどんどん自然ファーストになり、製品が腐らないようにする添加物使用の基準値はとても厳しくなっています。
けれど日本は、時代に逆行するかのように添加物使用の基準値がゆるいまま、というより添加物満載大国の有様です。


手にとった瞬間、食べるその時、つかうその時、お肌もこころもからだもよろこぶモノは、直感がいいねと囁き、気分が晴れやかになり、いのちの胎動が、かすかに、ほのかに感じられるような気がします。
身体は微細に振動して、数十兆個の細胞たちが、ハイタッチしあってるかのような。


そんな製品がスタンダードになる社会を実現するのは、特別なことでも特殊なことでもない、と私たちは考えています。
循環型の環境ファーストを目指すなら、有料の袋や、割りばしの政策じゃなくて、添加物使用の基準値を厳しくして、オーガニックや無農薬で頑張る生産者や製造業者を支援する政策を立てる方がずっと効果的だと思っています。


日本だけが(利権のせいか、既得権益ファースト政策のせいなのか)、いのちがよろこぶ製品を提供する供給者にはまったくもって無頓着。
というより国の政策は、邪魔ばっかしてるような気がします。


そんなことに、一人一人が気づいて、お肌がよろこぶ、心を豊かにする、からだがととのう製品を、真実求めはじめた。希望のもてる日本の未来を、真剣に考えはじめた。
(希望を込めて)そんな気がしています。


「新しい時代の、新しい価値観を反映する商品を生み出そう」
「時代が変わっても、世の中が変わっても、人に喜ばれ、そして人をまもれるような商品開発を進めていこう」​
こうしてShield72° Organic aroma skincare series という、自然派化粧品が生まれました。
公式ホームページはこちらです。
お立ち寄りくださるとうれしいです。


*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。