aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

ゼラニウム 安定の「もんどころ」感

匂い、天竺、葵


ゼラニウムの精油は、化粧品業界では正式名ニオイテンジクアオイ油といいます。
匂い、天竺、葵です。
アフリカ原産のハーブで、日本に持ち込まれたのは江戸後期から明治のころ。
葵に似ているのでアオイ、
遠い異国からやってきたのでテンジク、
良い匂いがするからニオイ、
ということでニオイテンジクアオイと呼ばれるようになりました。
ローズの香りと同じ成分であるゲラニオールやシトロネロールを含むので、ローズゼラニウムの別名も持っています。



現在のぺラルゴニウム属に分類される前はゲラニウム属に分類されていた名残で、一般的にゼラニウムと呼ばれますが、園芸種を含めるとゼラニウムには200を超える種類があり、似ているといわれる葵の花も、日本人ならみんな知ってる「三つ葉葵のもんどころ」をはじめとして、タチアオイやウスベニアオイ、ゼニアオイなどたくさんの花があります。


ゼラニウムの精油を初めて蒸留したのはフランスの化学者で1819年ころ。
それ以降ゼラニウムはローズに代用される香水の大切な成分として、フランスの香水業界で重宝され、ヨーロッパの商業街道を疾走します。
現代ではヨーロッパ一般家庭の庭や生け垣で定番ハーブとなっており、ゼラニウムの鉢植えを、夏は庭のアプローチに、冬は室内の壁際にならべて、長いスカートの裾がゼラニウムの葉をなでることで、周囲に漂う香りを楽しむ風習が受けつがれています。



控え控え~このもんどころが目に入らぬか~


植物が精油をその身にもっている理由の一つに、忌避効果といって虫の捕食から身を守ったり、カビや細菌の繁殖を防ぐためというのがあります。
ゼラニウムはアフリカ喜望峰原産ですから、過酷な環境下で生き延びるために忌避効果を発揮して、虫の捕食やカビの発生、細菌の繁殖などから葉を守ってきた進化の経緯があると考えられます。
だから精油は可愛らしい花ではなく、葉にもっているのです。


「ええい、このもんどころが目に入らぬか~!控え控え~」的なやり取りが、植物と虫たちの小さな世界でもくりひろげられているのかもしれません。


葉ではなく花や果皮に精油を持つ植物は、逆に鳥や蜂を引き寄せて、受粉してもらったり、果実を種ごと食べて遠くへ運んでもらったりして、進化プロセスを辿ってきました。
誘引効果といいます。



星と植物


ゼラニウムがヨーロッパ人に着目され、アフリカから持ち込まれた17世紀に、イギリスでセンセーショナルな薬草本を出版したハーバリスト、ニコラス・カルペパー。
占星学にも精通しており、星と植物の関連性、疾病についての処方を一般に開示しました。当時ハーブの知識は民間に開示されず、聖職者と権力者のみが扱える時代でした。
一般人がハーブを植えたり勝手に使用したりすると魔女狩りにあった時代です。
15世紀から18世紀の間に4万人が極刑にあったともいわれています。 
いつ誰にチクられて告発されるかわからない、戦々恐々とした時代に、なんという天晴男。カルペパーさんは何冊もの本を出版し現代の植物学の礎をつくられました。




植物が薬効成分をもち、人体の不調や不安定な感情を癒す力を持っていること、
花を愛でて視覚を楽しませ、
香りで嗅覚を楽しませ、
食するものは味覚を楽しませ、
葉の擦れ合う音で聴覚を楽しませてくれること。
さらに食器や敷物、屋根や柱となって生活を支えてくれること。
カルペパーさんは植物の偉大さを、惑星象徴を使って示した人物の一人です。


占星学と医学の結びつきは古代に始まり、医学の父として名高いヒポクラテス(BC400年ころ)は身体の病と治癒は、惑星の周期と密接に関連していると考え、占星学の基礎的知識を診断の手立てとして活用していました。 
スイスの医師、占星学者でもあったパラケルスス(1500年ころ)は、身体の各部位、内臓に惑星をあてはめ、薬草、貴石、色彩に影響を及ぼす「支配星」について集録しました。
西洋には古代から、ハーブを温度や湿度というエネルギーで分類し、占星学の星座や惑星に関連して学ぶことを通例とする学派がありました。



喜びや楽しみを求める健康的な心


ゼラニウムは金星庇護のもとにあるハーブといわれます。
占星術を知らない人のために補足すると、金星象徴というのは、情緒や感受性の豊かさをとりもどし、喜びや楽しみを素直に求める健康的な欲求を回復させるのに役立つハーブと定義できます。


また金星は牡牛座と天秤座の支配星なので、現代風にいうとお出かけ用ファッションを楽しむ気持ちとか、好きな人を見てキュンとなる気持ちとか、キレイになりたいカッコよくなりたい気持ちを楽しむこととか。
もうちょっと広げると、空の広さや、風の心地よさや、太陽の光に胸が躍って、歌ったり踊ったり、走り出したくなる気持ちや、音楽や芸術に触れて感動する気持ちを、抑圧せずに、存分に楽しむこと、といえます。


ゼラニウムはフローラルでほんのり甘い香りがしますが、固有の特徴である忌避効果(わたしは「もんどころ感」と言っています)を発揮しつつも、ゲラニオールやシトロネロールといったバラ様の香りによる安心感、清浄感、つつみこまれるようなしっとり感があり、Shieldに守られているような心もちに。



香りのグラデーション


香り成分にはトップ、ミドル、ベースと速度があります。
香り分子の動きが速いものほど人の嗅覚の受容器に届くのも速くなります。
3つの速度の精油をうまくブレンドすると、素早く動くトップが香り、追っかけミドルノートが受容器に届き、最後にベースノートが香るという、香りのグラデーションが楽しめる構造になります。


わたしたちが提供している自然派化粧品ブランド、Shield72°/シールド72°は、ローズマリーを中心としたオーガニック精油だけのブレンドで、自然な香りを楽しめるラインナップになっています。
ローズマリーとゼラニウムのブレンドは、スッと香るローズマリーを追いかけるように、ふわりと届くゼラニウムのグラデーションが楽しめます。



アロマ業界ではホルモンバランス・レシピの代表格


ゼラニウム精油に含まれるゲラニオール成分は、アロマ業界では視床下部/下垂体というホルモン分泌の司令塔に働きかけ、心身のバランスを整えるはたらきがあると考えられています。
視床下部/下垂体は免疫系、そして交感神経と副交感神経のオン/オフをつかさどる部位でもあるので、ホルモン、免疫、神経系という三つ巴のヒーリングシステムを整える効果があると定義されています。
こうした植物、ハーブの恩恵をもっと身近な知識として広く扱い、試したり、学んだり、経験できる環境づくりも、未来につなげ、残していきたいプロジェクトのひとつだと、わたしたち開発チームは考えています。



節度と抑圧


植物の恩寵を自由に受け取ることができない時代。
知ることを禁じられ、試すことや、経験することを制限される時代。
魔女だと告発されないよう細心の注意を払って、穏便に、おとなしく、安心安全第一で、少しの波風も立てずに、誰にも迷惑をかけないように。


もちろん中世ヨーロッパの魔女狩り時代と現代とは違いますが、良かれと思った節度が、いつの間にか抑圧になっていると感じた時には、ゼラニウムの芳香を試してみるのもおすすめです。



Shield72° Organic aroma skincare series 公式ホームページです。
こちらにも、ぜひお立ち寄りください。


*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。