菖蒲(しょうぶ)
5月の菖蒲湯
5月午日に菖蒲湯につかる伝統行事は、柚子湯や桃葉湯と同じく、古くから伝わる民間療法です。
参考までに今年は5月12日が午日ですが、6月の午月入浴説もあり。
グレゴリオ暦から日にちを推測するのは、ビミョ… な感じです。
どちらにせよ旧暦5月はグレゴリオ暦でいうと6月にあたり、ちょうど梅雨時期にかさなりますから、さっぱりと沐浴するのは理にかなっていたことでしょう。
また日本では田植えをする早乙女が、神聖な行事である田植えにさきだち、「魔がきらうという菖蒲」で葺いた小屋にこもり、穢れを祓ってから田植えにのぞむ伝統もありました。
インバスのはじまりともいえる菖蒲湯は、もとは石菖(せきしょう)とよばれるショウブ属のハーブをつかっていた説が有力です。
石菖は、菖蒲を小ぶりにしたような、岩場に自生するハーブで、学名 Acorus gramineus と記載されるほうです。
学名アコルスと表記されている石菖をハーブ園や植物園でみかけることが多いのは、もともと日本の渓流や水のきれいな沢地に野生種として根づいていたハーブだからと思います。
石菖の根茎は日本の伝統的な薬草のひとつで、生薬名は石菖根(せきしょうこん)。
「頭がすっきりする薬草」として処方され、鎮痛、鎮静、健胃作用のある民間薬でもありました。
沐浴することで神経痛や通風を緩和すると考えられてきました。
ざんねんながら現代では自然保護連合指定のレッドリストにのっています。
石菖はきれいな水辺が生育条件なので、誰のものでもない土地・山里をみんなでまもっていく地球循環意識をベースとして政(まつりごと)も連動できれば、復活する可能性もあるのでしょう。
石菖より菖蒲の葉に注目したのは貴族、武士など庭園を所有する人々だったようで、菖蒲のほうが大きくて見ごたえもあるので、庭園に使用される頻度がおおくなり、またその葉が剣のように鋭く、天にむかってまっすぐに育つことや、邪気を祓うようなさわやかな香りをもつこともあわせて奈良時代から端午の節句に使用されるようになったそうです。
武士にとっては「しょうぶ」の響きが縁起よいものとされ、魔除けとして吊るしたり、沐浴習慣も石菖に変わって菖蒲がつかわれるようになり、端午の節句は江戸時代に五節供(人日正月7日・上巳3月3日・端午5月5日・七夕7月7日・重陽9月9日)のひとつに定められました。
菖蒲湯の作法が庶民に広がったのも、江戸時代といわれています。
菖蒲のおもな香り成分はアサロンとオイゲノール、テルペンといわれています。
菖蒲の精油をつかったことはないのでハーブ事典(「ハーブの写真図鑑」レスリー・ブレムネス 日本ヴォーグ社)の説明から推測してみますと、
1.「根はシナモンのような強い香りがする」とありますから、オイゲノール、アサロン多めで、消毒殺菌作用がつよいと思います。
2.「根茎は香りよく薬効がある」とあります。アサロン、オイゲノールとテルペン類がほどよい加減で配合されているのかと思います。
3.「細い剣形の葉はオレンジの香りがする」とありますから、テルペン類多めなのかと思います。
過去の経験から、摘みたての菖蒲葉をうかべたお風呂では松の葉にシトラス系とクローブをほんのり足したような芳香で、あたまもからだもすっきりしました。
菖蒲湯は腰痛や神経痛を和らげるというのが通説で、沐浴にはもちろん弛緩、リラックス効果がうたわれます。
それなら松の葉や柑橘の皮でもおなじだろうと思いますが、古人が初夏から梅雨入りの沐浴に、わざわざ菖蒲の葉をえらんだのは、とくべつなナニカがあったからではないのかな、と想像しています。
5月は地上を照らす光の量がぐんと多くなりますから、菖蒲に親しむことで、光の受容レスポンスがととのう、とか。
剣にたとえられる菖蒲の葉は、鋭くまっすぐ天に向かうカタチなので、エーテル体をおなじようにシュッとさせて、天からふりそそぐ光への関心をつよめる、とか。
菖蒲の「蒲」の字は、【ハーブ天然ものがたり】がま|白木海月@Shield72°公式note|noteでご紹介した通り、水辺の耕地からよく生える草をあらわしたものでした。
「菖」の字は「光をはなつ日」を象形した文字とOK辞典さまにありました。
光をうけとり光をはなつ。
光量が増す初夏ならではの小気味よいレスポンスは、デバイスの性能をアップグレードさせておくとよりスムーズになります。
太陽光をめぐみの光に変換するのは地球の大気圏で、それをWi-Fiルーターとするならば、高性能Wi-Fi6であっても、ストリームが8本あっても、デバイスが対応できなければ宝のもちぐされとなってしまいます。
ながい雨の季節に入るまえに光を存分に受容できるよう、感受性ストリーム(神経)の筒そうじをして、flow をよくしておく。
そんな秘密の薬効が、菖蒲の葉にはかくされているのかもしれないな、と。
しょうぶとあやめ
菖蒲(しょうぶ)の葉はネットで購入することもできる時代になりましたが、日本ではアヤメ属との混同があるのですこし整理しておきます。
しょうぶ は池や川などにはえるショウブ科ショウブ属のハーブです。
さいきん学名変遷があり、古い文献にはサトイモ科と記載されています。
しょうぶ は、学名 Acorus calamus 、園芸業界ではカラムスと呼ばれることもあり、英名では sweet flag(スイートフラッグ)と呼ばれます。
葉があまい芳香をもつのでスイート。
フラッグは旗のことではなく、剣のようにほそながく先のとがった葉を意味するそうです。
しょうぶ は北半球の熱帯、温帯地方を中心にひろく自生するハーブで、薬草・漢方薬として、古い時代から使用されてきた歴史をもち、古代エジプト時代には、治療薬、媚薬としての記録がのこっている古参ハーブでもあります。
しょうぶ の香り成分はお茶やリキュール、香水にも配合され、商用活用されていますし、生薬では根茎を使った菖蒲根しょうぶこん、またはカラムスコンと表記されて、鎮静、健胃効果のある漢方薬として用いられてきました。
インド伝統医学アーユルヴェーダでは、脳や神経系を活性化する作用から、「感受性や気づきの力を高める、精神に親和する最良のハーブ」として位置づけられています。
「インセンス-薫香料と香を焚く儀式」トーマス・キンケレ フレグランスジャーナル社
しょうぶ が「あたまをすっきりさせる」「脳や神経に作用して感受性を高める」など、伝統的に古い歴史をもちながら、いまひとつ日本の商業街道にパッとおどりでてこないのは、アサロンという成分がモヤッと評価されているせいかと思います。
アサロンには(アカデミックな領域で)賛否両論あり「肉体」に対する効能がいまは研究途上で、はっきりとした決着がついていない、という感じです。
そんな しょうぶ は、5月になると蒲がまの穂みたいな花びらのない黄色い花が咲きます。
「菖蒲」とかいて、あやめとも読みますが、アヤメ属は花びらのある、いわゆる花を咲かせる種です。
江戸時代からはじまった園芸種はわんさかとありますが、そのはじまり、原種はノハナショウブです。
ずいぶん昔になりますが、北海道野付半島の原生花園でみたノハナショウブの園では、花びらの中央にある黄色い模様が、大量につらなる光る目のようだと感じてぞくぞくしました。
菖蒲は、しょうぶもあやめも、光の高性能レセプターであることに変わりはないのかも、と想像がふくらみました。
野付半島原生花園 | 別海十景 | 景観スポット | 観光スポット | 観光・イベント | 北海道別海町
園芸種の花菖蒲はべつとして、アヤメ属のハーブにも民間療法としての伝統や歴史がたくさんありますが、それはまた別の機会にまとめてみたいと思います。
伝家の宝刀
感受性を起動させる五感は、からだと世界のあいだにある、窓のような役割を果たしてくれます。
ひとりとして同じもののない感受性という窓によって、からだの周囲にはユニークで可変的なステンドグラス彫像が構築されていくような印象があります。
感覚器はいってみれば、地球サイズという特殊な生活スタイルを堪能するための、翻訳機みたいなものかもしれません。
数値化できるもの(地球サイズの人類が感知できる音や色など)は、下記のような表で確認することができます。
■ヒトの視覚が認識できる可視光
■「健康の地図帳」講談社 ヒトの聴野の範囲
ユニークなステンドグラスをとおして身のうちにとりこまれた情報は、おなじように感覚器官をとおして、たえず情報発信しています。
目は光といっしょにメッセージを受けとり、同時に自分のこころのうちが光となって顕われます。
耳にはさまざまな生活音が入ってきますが、なにかの対象に積極的に耳をかたむけることは相手の支えになります。
口はたくさんの味を体験し、そのおなじ口をつかってことばを紡いだり、歌うことができます。
鼻はたえず呼吸をくりかえし循環そのものを支えています。
皮膚は対象の気配やてざわり感を受けとめつつ、愛やエールを送ることができます。
外部からのつよい刺激がつづくと感覚器官はつかれてしまい、光や情報の感知力がにぶります。
嗅覚レセプターはとくにその傾向がつよいといわれており、おなじ匂い分子を受けとりつづけると香りを認識できなくなってしまいます。
感覚器官は外部刺激を受けとると、電気信号(パルス・振動)に変換して脳に情報を伝えます。
■「目でみるからだのメカニズム」堺章 医学書院
知覚神経は、情報を振動に変換してつたえるストリーム(筒)のようにも思えてきます。
(神経から神経に情報をつなぐホルモンの種類や分泌量もおおきく影響すると思うので一本の筒みたいにたとえるのはどうかと思うのですが)
たとえば五感という窓からからだにとりこまれた情報を光にしてみたら、縦横無尽にはりめぐらされた神経を、光(振動)は百人百様でかけまわり、ひとつとして同じカタチのない、星座のようにみえるのかもしれません。
各人各様まったくちがう内的体験をしていたとしても外からはわかりようもないですし、自身でさえ自己の内的体験を客観視するには練習が必要です。
なにかの刺激によいしれて興奮すると、さらなる刺激をもとめて、もとめて、もとめつづけて、感覚マヒしてしまうことさえあります。
西洋占星術では、5月の太陽は牡牛座に位置する季節。
成熟した牡牛座は、からだのなかを行き交う振動をていねいにみつめ、きいて、かぐわい、あじわい、ふれてゆく能力が高い、五感マエストロのようです。
著名な作曲家や芸術家の出生図には、牡牛座に特徴的な天体やアスペクトがあるといわれていますが、牡牛座の季節にふりそそぐ光には、生まれもった才能を活性化させるような、創造の糧となるエネルギーが豊潤にふくまれているような気がします。
もしも菖蒲がほんとうに、神経系に親和して光の受容レセプターをととのえる植物なのだとしたら、地球という星の、人類という種族だけが駆使することのできる能力・五感をとぎすまして、感覚器官を至高無上の境地へみちびく、伝家の宝刀なのかもしれません。
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お読みくださりありがとうございました。
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