aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

胡椒

スパイスの王様


インド原産の胡椒は、BC2000年ころには伝承医学で処方され、おもに泌尿器系と肝臓の不調に役立つと考えられていました。


こしょう



古代において胡椒は贅沢品で、古代ローマでは胡椒と金銀がおなじおもさで交換されていたという文献ものこっています。


また貨幣のかわりに胡椒で税を支払うこともありました。


中世ヨーロッパでも胡椒人気はおとろえをみせず、結婚の持参金、税金、賃料の支払いにつかうことができたといいます。


現代ではすっかり栽培種が定着し、あまりにポピュラーな調味料なので、金と同等の価値があるほど貴重だったときいてもピンときませんが、その風味でたちどころに唾液がわきでて(つまり胃液も出てるわけで)、消化器系を活性化し、体内の熱をあげることで元気になり、殺菌抗菌作用で泌尿器系のトラブルや熱病などにも対応できる胡椒は、まさに魔法の植物、スパイスの王様という名にふさわしいものでした。


ヨーロッパを中心に、遠い異国に自生する、レアで神秘的なスパイスは熱狂的に支持されて、インドとヨーロッパ間の胡椒貿易は熱を帯びたように注目され、時の強国ポルトガル、スペイン、フランス、イギリスなどが我もわれもと参戦し、胡椒海戦が勃発します。


スパイス戦争とよばれる搾取と利権争いは、アジア圏のさまざまな地域を舞台にくりひろげられましたが、そのひとつモルッカ諸島での戦いについては、【ハーブ天然ものがたり】丁子/クローブの記事に綴っています。



基本、略奪ベースで歴史をつみあげてきた国同士の戦いはポルトガルに軍配があがりますが、種や苗を入手して各地で栽培できるようになると、スパイス利権のたたかいも収束してゆきます。


現代では認知度ナンバー1、塩胡椒とよばれるほどの定番スパイスとなった胡椒は、ほんらいはジャングルの奥地にひっそりと生育する貴重なハーブでした。


栽培種がふえるとともに世界中の食卓に配され、あらゆる民族料理に活用されるようになりました。


ブラックペッパー、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、ピンクペッパーと、色や風味によって4種類のものが市販されています。


胡椒は白い花を咲かせたのち、15センチくらいの果穂に50粒くらいの実をつけます。


緑色の未熟果にはスパイシーな胡椒の風味がぎゅっとつまっていますが、赤く熟すとともにマイルドになってゆきます。


ブラックペッパー

左「ハーブの写真図鑑」レスリー・ブレムネス 日本ヴォーグ社
右「ハーブ ハンドブック」レスリー・ブレムネス 東京堂出版



黒胡椒/ブラックペッパーは、完熟するまえの緑色の果実を天日干しして黒色になるまで乾燥させたものです。


香りと辛みが強く、精油もたくさん採油できるのでブラックペッパーのアロマは黒胡椒から水蒸気蒸留法で抽出するものがおおいです。




白胡椒/ホワイトペッパーは赤く熟した果実を水に浸して発酵させ、柔らかくなった皮をむいて乾燥させたものです。


つまり発酵食品でもあるのですが、機械産業が発達した現代では黒胡椒の皮を機械でむいて白胡椒としているものもあります。




青胡椒/グリーンペッパーは完熟するまえの緑色の果実をゆでてから塩づけにしたものです。


さいきんでは採取後すぐにフリーズドライにしたものも市販されているようです。
さわやかな色味と香りで、粒のままちらしたりアクセントにもなります。




赤胡椒/ピンクペッパーは赤く熟した果実をそのまま塩づけにしたものと、天日乾燥したものの2種類があります。


香りと辛みが円熟したマイルドな胡椒です。




どのハーブ・スパイスもそうですが、乾燥させたもののほうが風味は長もちするので、白胡椒と黒胡椒は生産地からとおくはなれた国でも香りがよくたちます。


しっかり乾燥させたものであっても、ハーブ・スパイスは3年以内にはつかった方が風味よくいただけると思います。


ジャングルの奥地に自生する野生種、生粋の胡椒はいったいどんな風味で、どんな魔力をもっていたのだろうと想像すると胸が高鳴ります。


インドの創造神はいくつもの化身をもち、黒かったり白かったり、赤くなったり青くなったりと、皮膚の色を変えることで性質、役割などを変化させます。


インド古参ハーブの胡椒も、その御業を受けついでいるのではないかな、と。


パールバティー

シヴァ神の神妃

穏やかで心優しい、金色の肌を持つ女神

彼女の肌は元々は黒色だったが、森にこもって苦行のち金色に変化した

黒い肌の女神はカーリーで、ドゥルガーとも同一視されるシヴァのシャクティ

ドゥルガー

ドゥルガーの名は「近づき難い者」を意味する

シヴァとヴィシュヌが発した光から誕生した女神

カーリー

その名は「黒き者」あるいは「時」の意をもつ

青みがかった黒色で3つの目と4本の腕を持つ

破壊の象徴女神

勝利に酔ったカーリーが踊り始めると大地が粉々に砕けそうになる

夫のシヴァ神が横たわり、その衝撃をうけとめている




発散力とスウィング魔法


シルクロードをわたって中国にはいってきた胡椒の名は、ソグド人などが居住する西方~北方の異民族をさす「胡」と、小さい実という意味をもち山椒にもあてられた香辛料をあらわす「椒」のくみあわせです。


日本でも胡椒の名はそのままつかわれるようになりました。


奈良時代には生薬として用いられ、平安時代から調味料としてつかわれるようになり、江戸時代には薬味として、また夏の暑気払いに、だし汁と胡椒をかけた、胡椒飯なるものも登場したとか。


ピリリとした風味でくしゃみ一発(…ッてやんでぃ!)。


からだをブルッとふるわせて目をさますような刺激的な胡椒の香りは、江戸っ子好みだったのではないかな、と(べたな妄想)。


江戸時代の書物「雑兵物語(ぞうひょうものがたり・雑兵30名の功名談、失敗談、見聞談などの形式を借りて雑兵の心得を説いたもの)」にも胡椒は登場し、滋養強壮によい香辛料と考えていたことがうかがえます。


毎朝胡椒を1粒ずつかじれば夏の暑さにも冬の寒さにも当たらない


雑兵物語


胡椒の独特な風味であるピリリとした刺激はピペリン(アルカロイドの1種)という成分で、辛味を感じさせ、鼻腔神経を刺激します。


ピぺリンには多様な作用が認められ、抗菌作用をはじめとして、食欲増進、消化促進、健胃、駆風(ガスをだす)、発汗促進、利尿、鎮痛作用が一般的なものです。


大量の汗をかくと代謝が乱れて、消化器系も不調となり、食欲不振や消化不良、下痢や腹痛、腹部膨満感など、いわゆる夏バテになりやすいですが、そんなときこそ胡椒の出番といえます。


ピペリンには血管拡張作用もあるとされていますから、からだの末端にまで血がめぐり、冷えの改善にもつながると思います。


冷蔵庫がない時代、ハーブは食品の保存におおいに役立ってきたのは周知のとおりですが、胡椒もそのひとつで、腐りかけた肉の匂いをおいしそうな香りに変化させ、防腐作用もあいまって珍重されました。


ブラックペッパーという名で精油も市販されており、香り成分で交感神経優位モードにはいる特徴をいかし、運動まえに骨格筋を緊張させて準備させるとか、運動後は血管拡張作用を利用して筋肉痛予防のマッサージするとか、つかいみちいろいろです。


胡椒風味にはくしゃみの振動をおこすほどの刺激がありますが、それはゆりかごみたいに閉じたり開いたりしている骨盤や頭蓋骨の、緊張と弛緩のリズムをとりもどすスウィング魔法のなせるワザなのではないか、と妄想しています。


心臓が16ビートをきざんでドキドキ高鳴りやすい季節には、からだも一緒にうごかして感受性を同期しておくと内臓に負担がかからない説は、個人的な実体験もあいまって 過去記事にもちょくちょく綴っています。


心臓と、心臓の表裏となる小腸が、興奮しているわりにエネルギーが循環せず、もんもんとくたびれてしまう症状には、ピリッと心身をふるわせるほどの辛味でゆすぶって、ためこんだものを発散したのち気血水をめぐらせる、胡椒の香りが助けになるなぁと感じます。
(夏大根や唐辛子もおいしい季節ですね)


心臓SOSサイン
舌がこわばる、のどがつかえる、みぞおちがかたくなる、ちょっとしたこと(音や気配)にびっくりする。


小腸SOSサイン
首がこる、足がむくむ、多尿のあと頻尿になる、はらの蟲が水を全部のみこみかかえこんで吐きださない(感じ)。


五行の相性と相克

  ↑「図説 東洋医学」学研から、五行相性と相克、対応する臓器



五行説


五行説では心臓によいとされる苦味は余分なものを排泄して、湿気をとりのぞき乾かし固めるちからがあるとされています。


心の気が旺盛になる夏は、暑さと熱による火邪で肺が剋されるので、肺をたすける辛味成分もとりいれてバランスをとります。


辛味は気のめぐりをよくし、滞っているものを発散するちからがあるとされていますから、心身リズムをとりもどすためのブースターみたいにつかうのもありかな、と思っています。


☆☆☆


お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
ハーブのちから、自然の恵み
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