aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

にんにく

天然の祭壇


出自説があいまいで(いまのところ)中央アジア原産と考えられている にんにくは、BC2600年ころ古代シュメール人が粘土板に記録し、古代エジプトの医学書「エーベルス・パピルス(BC1550年頃)」に、疲労回復、強壮作用がある薬として収載されている古参ハーブです。


72°【ハーブ天然ものがたり】にんにく


ピラミッド建築にたずさわる人々の健康と力が保たれるよう支給され、ピラミッド内には、にんにくを食べる労働者の壁画がのこされています。


日本には中国を経て平安時代には伝わっていたといいます。


漢字にすると「蒜」「大蒜」と表記され、平安時代の辞書、和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)には「大蒜(おおひる)、小蒜(こひる)」などの記載があり、古名、比流(ひる)とあります。



巻17・菜蔬部第27・葷菜類第225・15丁裏7行目 大蒜 本草云葫[音胡和名於保比流]味辛温除風者也兼名苑云葫一名𩐏[音煩]大蒜也

・葷菜類第225・16丁表1行目 小蒜 陶隠居本草注云小蒜[和名古比流一云米比流]生葉時可煮和食之至五月葉枯取根噉之甚薫臭性辛熱者也


国立国語研究所 二十巻本和名類聚抄[古活字版]巻十七より


おなじカタチのいのちが流れるようにびっしりと、ならんでいるようすが「比流」の文字から想像できますし、「蒜」とあらためたのは「示」を神とする漢字字説から鑑みると、にんにく(と、のびる)が古人にとって、地上に顕現した神々の化身であるかのような印象をうけます。


(のびるは後述しますが、史前帰化植物とされている日本の野生種です)


日本の漢文学者・東洋学者で、「古代の漢字は宗教的、呪術的なものが背景にあった」と主張した 白川静 - Wikipedia(1910 - 2006年)による白川漢字学説では、「神」の意味と「示す」の意味を同列に論じている、とあります。


白川漢字学説には言葉という視点がないから、「神」の意味と「示す」の意味を同列に論じている。しかも「示す」は視の*仮借としている。「神」を本義とするのであろう。


*仮借かしゃは、音だけあって文字にならないコトバの意


✩✩✩


示の字源については諸説紛々であるが、祭壇の形と解したのは明義士(James Mellon Menzies、1885~1957、カナダの宣教師で甲骨文字研究家)が最初である。


おそらく示は足のついた祭壇の図形である。実体よりも形態や機能に重点を置くのが漢字の造形法である。形態的にはまっすぐ立てたものであるから「まっすぐ」のイメージがあり、機能的には神意がここへまっすぐに顕現される場所と考えられたので、「まっすぐに(はっきりと)現ししめす」というイメージが捉えられる。


725「示」は神の意味か? : 常用漢字論―白川漢字学説の検証


祭壇をしつらえるのは、天から降臨する神々をお迎えするため。


それを人類につたえてくれたのが、野に山に、神仙たちのお座布団として根づいた植物たちではないか、と想像すると楽しくなります。


背のたかい樹々は空中回廊、あるものは天高く枝葉をのばしてきざはしとなり、あるものは葉っぱを大きく繁らせ酒宴のための大広間をつくる。


背のひくい植物は四大元素のとおりみちで、風、水、光(火元素)が地上世界にはたらきかけて、土元素界を開墾しつづけ、四大精霊が闊達にうごきまわれるよう緻密なとおりみちをつくられた、と。


神仙たちのお座布団として「蒜」の字をあてられたにんにくは、古代シュメール文明からうけつがれてきた古の叡智をやどす、天然の祭壇なのかもしれません。



唯一無二なるにんにくの独特の香りについては、アリウム属(ネギ属)について綴りました【ハーブ天然ものがたり】チャイブ&あさつきの記事に紹介しています。



香味の強弱はちがいますが、涙をさそう玉ねぎ臭も、食欲をそそるにんにく臭やネギの風味も、硫化アリル、アリシンという成分のなせるワザです。


ウィキによると硫化アリルをもつ香味野菜を食することで、

血液凝固の抑制、抗菌作用、抗酸化性、消化・吸収の促進、解毒の補助、

血中コレステロール低下、末梢血行善作用などにつながると(ウィキペディア-ネギ属に)記載されています。


日本ではにおいのつよい(アリウム属/ネギ属の)植物を総称して蒜(ひる)と呼んできましたが、史前帰化植物とされている日本の野生種、野蒜(のびる)と区別するために にんにくは大蒜(おおひる)と呼称されます。



野蒜・のびる 学名 Allium macrostemon は、野に生える蒜(ひる)。

日当たりのよい土手などに生える野草で、小ネギやニラに似ています。

狭心症の予防、食べ過ぎによる食欲不振に効果があるとされてきました。

胃腸を丈夫にし、からだを温める効果が期待されています。


上記、のびる写真の花のよこについているのは「むかご」です。


植物は後続にいのちをつなぐため、あらゆる方法を駆使します。


「花が咲き、受粉して、種を結実する」というのは一般的ですが、そのほかによく知られているもので球根、根茎(地下茎)などあります。


挿し木や葉ざしで根がでるツワモノもいますよね。


むかごは葉っぱのつけ根に栄養分がたまって球状になったもので、地上部についた球根みたいな感じです。


にんにく と のびる はむかごをつくる植生をもち、地下や地上部に分身をつくって無性生殖をする、古典派でありつつアヴァンギャルドなハーブ…


いえ、古典派すぎて逆に前衛的になっちゃった、ということでしょうか。


植物界には陰陽分極するまえの、両性具有的神々の性質をまんまうけついでいるような、ニューウェーブ(というか普遍的)な存在がたくさんいます。


にんにくを二極化されていない存在と考えるならば、特定の空間や時間にしばられることのない、神仙的成分比率が多い生命種である、という見かたもできます。


神人鬼魂が混然一体としていた古の世では、感受性も見えかたも現代とはまるでちがっていたことでしょうし、神意がまっすぐにやどる植物を歴然と嗅ぎわけて、「蒜」という文字をあてたのではないのかな、と。


いつの時代にどの場所で誕生したのかはナゾですが、二極化された地球という箱庭環境にあわせることなく、いっぽんどっこでおおらかに生き抜いてきたにんにくには「なんとなくギャラクシー」な印象をもってしまいます。


かれらはもしかすると、遠い昔に、べつの星系からもちこまれた異星種なのでは…と、妄想たくましくしています。




悪魔の花束


にんにくは、古代ギリシャ、ローマ時代にもひろく知られ、行軍する兵士に支給されるハーブのひとつだったといいます。


吸血鬼を追いはらうために、にんにくをつないで首飾りにする護符は、いつの時代にどこぞのだれがいいはじめたものなのか?


現代では魔よけのシンボルとして形骸化されてしまった感もあり、すこしばかり滑稽で珍妙ないでたちとしてデフォルメされて、アニメや漫画にも登場します。


西洋では悪魔の花束、不快なジェニー、怪物の殺し屋など、いさましい二つ名をもつ にんにくですが、神聖で魔よけになるハーブとして、伝統的な民間療法からおまじないまで、さまざまに伝承されてきました。


1.身につけると悪魔(とくに吸血鬼)から身をまもる


2.ちいさな袋に入れて首にかけると風邪予防、腹部にまくと寄生虫予防


3.風邪のひきはじめには、にんにく1片をつぶして足うらにぬり、包帯をまく(現代には包帯がわりにくつしたがあり、精油というべんりツールもあるのでシソ科やフトモモ科のアロマで代用するのがベターかと思います)


4.船のりにとって海難よけのおまもりだった


5.鉱山夫にとって魔物よけのおまもりだった


6.にんにくを食べる夢は秘密をあばく(か、あばかれる)予兆


7.にんにくを13個つないだ首飾りを13日間身につけ、13日目の真夜中に交差する道のまんなかで首飾りをはずし、頭上に投げたら後ろをふりかえらずに家まで走ってもどると偏見から身をまもることができる


西洋のおまじないで、交差する道に供物をささげるのは大御所の魔女ヘカテ(女神ヘカテ)への祈願という感じがします。


稀代の魔物から、時間や運命までもコントロールできるヘカテは、もともとアナトリア半島(現在のトルコ)で信仰されていた女神で、のちにギリシアに入ってきたと考えられています。


もしもにんにくが時間と空間を超越できるスターシードで、星の子成分をおおめにもっているハーブならば、魔女ヘカテにとっても貴重な薬草だったのだろうと妄想はふくらみます。



ヘカテー・トリモルポス、「ヘカテー」は、古代ギリシア語で太陽神アポローンの別名であるヘカトス(「遠くまで力の及ぶ者」、または「遠くへ矢を射る者」。陽光の比喩)の女性形。


「三形態のヘカテー」は道の交わるところの女神であり、道路の守護神であった。



大御所魔女として、名だたる古典文学に登場し、いちもくおかれている伝説の魔女ヘカテ(天における女神ディアナ、地獄にありてはヘカテ)には、ふたりの娘がいたという説があります。


そのうちのひとりキルケは、薬草・薬学をとくいとする変身魔法の使い手で、オデュッセウスの物語に登場します。



魔力を無効化する薬草


キルケを訪れた客人は変化魔法で動物になり、ガタイがおおきく獰猛な獣であっても飼いならされたペットのように従順で、おとなしかったといいます。


それは土がかたまる以前の、原初の大地が生み出した動物たちの姿であるとも伝えられています。


ぇ~っと、つまり人型完成まえの、かたまっていない生命種ってことだから、精霊とか霊獣ってことじゃない?
なんて考えもしましたが、たいていの神話紹介では、大衆うけするソープオペラ風解釈となり「男たちは豚や家畜とされたのだ!魔女糾弾だ!」というおきまりの気配がついてまわります。


魔女キルケの変化魔法はヒトを家畜にするものだったのか、それともヒトという限定されたカタチからたましいを解放し、原初の記憶をとりもどすものだったのか?


原初記憶をすっかり失ってしまった現代脳では、はかり知ることはできません。


魔法は時間と空間にとじこめられないので、人を動物にできる=もどすこともできるわけで、キルケは魔法を解除する軟膏で、動物から人の姿にもどすこともできたと伝承されています。



トロイア戦争後の冒険譚、ホメロスの「オデュッセイア」の物語のひとつに、キルケの島は登場します。


キルケによって部下たちを動物にされたオデュッセウスは、救済のためキルケの館に向かいます。


魔女キルケはいつもどおり、動物変化薬をのませてオデュッセウスを動物に変貌させようとしましたが、魔法は効きませんでした。


というのもオデュッセウスはキルケの館にくるまえに、ヘルメス神からキルケの魔法を無効にするモリィ(またはモーリュ)という薬をあずかっており、魔女の目を盗んでそっとのみものにまぜておいたのです。


強力なキルケの魔法を無効化するモリィの材料は、乳白色の花がさき、漆黒の根をもつ、魔法の薬草だったといわれており、野生のにんにくの一種と伝承されてきました。



モリィ(にんにく)をさいしょに地球にもちこんだのは、ヘルメス神だったのかもしれません。


神々の伝令使ヘルメスは、旅人、商人、流れ(flow)、万物流転(flux)、流通や流浪、液体(水・水銀)、転換、解釈、ひねりや創意工夫などと関連がある神さまと伝えられています。


カドゥケウス(ケーリュケイオン)の杖で冥界・地上世界・天界を自由自在に往来するワザをもち、両性具有の神でもあり、普遍的すぎて古典派でありアヴァンギャルドでもある、という印象が にんにく にかぶるなぁと感じています。


にんにくがキルケ魔法に対抗できる、ヘルメス神公認ハーブだとしたら、人か動物か、人か精霊か、みたいな分極問題にふりまわされることなく、どこにも隷属しない、いっぽんどっこな精神をいっしょに地球にもちこんで、それからずっっと、すごみある風味をふりまいているのでは、と感じています。


さらに妄想をふくらませると、神意をまっすぐうけとる植物として蒜の名をつけられた にんにく は、ヒトのからだのなかでおなじように神意をまっすぐうけとる血液に親和して、自身の意図するカタチを維持できるよう、必要な成分をホメオスタシス的に調整しているのではあるまいか、と。


食物連鎖によって、あらゆるいのちを食べ、存在しつづけることができるわたしたちは、たべたものの存在感をうけついで、刻々とあたらしい存在に変化しています。


飲食物にとどまらず、呼吸による空気や匂い、視覚でうけとる情報、ことばや音楽、自然界の奏でる音や、肌で感じる情報もふくめて、いつでもなにかをとりこみ、呼気吸気、消化排泄をくりかえしています。


とりこんだものは身のうちにもっている成分と化学反応をおこしながら、血肉化したり、精妙な氣に変化したり、ときには気がつかずに通りぬけたり、あるいは消化できずに苦しんだりするのではないのかな、と。


それもまた、魔法のようなプロセスだと感じています。


人類の集合無意識には、根拠はよくわからないけれども絶対的な信頼とともに「にんにくは効く」みたいな金字塔があるように思います。


日常生活をおびやかす雑菌から魑魅魍魎にいたるまで、天然のボディガードとして心底たよりになるなぁという気分が、ゆらぎなく刻印されている にんにく は、現代人にとっても「魔法の薬草」そのものです。


☆☆☆


お読みくださりありがとうございました。
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