aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

昆布 からだよろこぶ

海の植物たち


海草、海藻はどちらも「かいそう」と読み、海の植物です。
一般的な陸地植物と同じように根・茎・葉があって種子で繁殖するのは海草。
菌類、藻類、コケ、シダのように胞子で繁殖するのが海藻です。


昆布は「海藻」の一般的な呼称で、マコンブ(真昆布)、オニコンブ(羅臼昆布)、リシリコンブ(利尻昆布)、ホソメコンブ、ミツイシコンブ(日高昆布)、ナガコンブ(長昆布)、ガッガラコンブ、ガゴメコンブ(写真↓)などがあります。

北海道の一部地域で採れるガゴメ昆布は、フコイダンというヌメリ成分が多量に含まれており、ヌメリ成分が免疫力を上げるという研究が進んで、サプリメントも出まわるようになりました。


フコイダン・ネットワークなるものがあると聞いたのは、かれこれ10数年前。
昼夜逆転の仕事をされている方々に圧倒的支持があると、ススキノでブイブイ活躍されていた御仁に聞いたことがあります。
ちなみにクマザサ茶にも噂話があったのを思い出しました。
先祖代々、神道を宗門としているおうちのヨガ仲間は、クマザサ茶を常飲していて「うちら半分冬眠しているような二重生活者だから」と冗談めかしていました。


平安時代に書かれた「本草和名(当時の薬草辞典のようなもの)」には、
「モズクはこぶや腫れ物を散ずる。アラメは婦人病を治す。コンブは13種の水腫を治す。黒焼きにすると梅干しと同じ効能があり、口、舌、歯牙の病を治す。水腫の病人にコンブと煮た鯉を食べさせると、小便の出が良くなり、病を治す」と記載され、古くから健康のために海藻を食していたことがわかります。



出戻り・留守番・冒険者


進化の過程で、海から果敢に陸地への進出をはかった植物たち。
栄養豊富な海水のなかでゆらゆらと漂いながら、全身すべてから栄養を吸収し、十分な太陽光を浴びる生活を捨て、水と光と栄養の争奪戦、また重力への適応を強いられる陸上へと、冒険するものたちが現れます。


そうして陸地で生きる術を獲得した植物のなかで、また海のなかへ戻ってきたのが「海草」、出戻り組です。
海藻とちがって、根や茎をもち、海のなかで花を咲かせます。


海中でずっと留守番をしていた「海藻」には、根も葉もありません。
岩に固着された部分は根の機能を持たず、海水から全身で栄養吸収をしています。
水の浮力にたゆたいながら成長するので、支えとなる茎も必要ありません。


海藻、海草ともに太陽光を利用して光合成を行うので、光の届く範囲に生息していますが、海面に降り注ぐ太陽光は、水深によって届く光の種類(波長の長さ・色)が違うので、受けとる光の種類によって、緑藻、紅藻、褐色と、色が変わります。



吸収する色、反射する色


【光の3原色】は赤、緑、青。
「りんごはなぜ赤い?」という例題は有名なおはなしです。
「人が色をみる」とき、モノから反射された光をみているのは、わりかし周知のこととなりました。
赤いりんごは青と緑の光を吸収して、赤い光を反射しているから、人の目には赤く見える、と。
全ての色が吸収されたら黒、反射されたら白に見えます。


*混乱回避のためちょっとだけ補足*

【色の3原色】シアン(青)、イエロー(黄)、マゼンダ(ピンク)は、光の3原色を2色混ぜることでできます。

3原色には光と色、2種類あります。





光がよくとどく浅いエリアの海藻は赤光・青光を吸収し、緑の光を反射します。
地上植物と同じで主に葉緑素(クロロフィル)で光合成しています。


光がとどきにくい深いエリアには、浅瀬で吸収されなかった緑光がとどきます。
青・緑の光をよく吸収する生体色素はカロチノイド、反射する色は赤や黄、橙色です。
カロチノイドは
βカロチン
ルテイン
アスタキサンチン
カプサイシン
リコピン 等々、
よく耳にする、からだによい色素のオンパレードです。
効能はいろいろうたわれていますが、共通しているのは抗酸化作用があること。


可視光線のはしっこにある紫の光、その先にあるのは紫外線。
紫外線のエネルギーを受けすぎると酸素が活性化し、脂質を酸化させ、タンパク質を変性し、細胞にダメージを与えることがわかっていますが、カロチノイドは抗酸化作用によって紫外線の高エネルギー波を受け流す、創意工夫のたまものです。


海の深みへととどく光の色の順番は、緑→青→赤となり、深いエリアに生育する海藻は、緑の光をよく吸収するためにカロチノイド色素をもって紅藻(赤や紫色)となります。
浅瀬と深海のあいだに生育する海藻は、赤光をあらかた吸収された微妙な赤青の光を吸収しつつ、橙、黄、緑、水色の配合が交じった茶褐色になります。



日本古来の食


諸説あるうちから、おめでたい語源説をお披露目します。
こんぶの古名「ひろめ」は、幅が広い海藻という意味で、「ひろめ」は「広布」と表記されていました。
「広布」を音読みで「こんぶ」と呼ぶようになり、現代の婚礼や披露宴を「おひろめ」というのは古名「ひろめ」に由来しています。
結納やおめでたいことのご挨拶に昆布が使われる由縁です。


祝儀以外にも、室町時代には武将たちの出陣や凱旋に、打ち、勝ち、よろこぶとして、一に打ちあわび、二に勝ち栗、三に昆布は欠かせない食べ物だったそうです。
この3食品は食べ方、飲み方の作法もあり、三三九度の原型ともいわれています。


どれも日本に古くからある食品ですが、時代は変わって、のしアワビはイラストになり印刷され、正月飾りにはスルメが代用されることも。
栗も国産ものは手に入りにくくなりました。
昆布だけはいつまでも、庶民の味方でいてほしい。


ところで昆布産地は北海道が多いわりに、大阪に越してきてからの方が昆布消費多くなりました。
昔は船で大阪まで輸送していた昆布、そのあいだにうまみ成分がいい具合に醸成され、大阪だし文化が栄えたとか。
からだよろこぶ、ヨロコンブ。
おだしに使った後は、佃煮用に小さく刻んで冷凍保存しています。




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*当ブログで紹介している植物等の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。