aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

クラリセージ

クリア・アイ


クラリセージ(clary sage)のクラリはラテン語の明るい・クリアという意味の clarus(クラールス)からきています。


クラリセージ


別名にオクルス・クリスティ(キリストの目)があり、クラリセージの種から得られた粘液で、むかしは目の異物をとりのぞいた使用法から、その名がついたと考えられています。


クラリセージは「クリア・アイ」という意味をもつハーブとして、ヨーロッパを中心に古い時代から活用されてきました。


甘いナッツのような香りをもつので、ワインの香りづけに使用されてきた歴史もあります。


ヨーロッパから中央アジア原産のクラリセージは、1500年代にはイギリスに導入され、ビール醸造するときのホップに代用されていました。


(ホップのお話はこちらに綴っています)


アロマテラピーの普及によって、クラリセージは消化不全や月経のサイクル改善、鎮静・鎮痛作用をもつハーブとして、ひろく認知されるようになりました。


流通産業にのり供給にもとどこおりがすくないハーブなので、飲食物の香料や香水、化粧品、日用品などあらゆる分野で香りづけに使用されています。


ワインやビールに活用されてきた歴史がありつつ、現代ではお酒を飲んでいるときはクラリセージの香りで悪酔いしたり、眠りこんでしまうという注意事項もよく耳にします。


この精油は機能を緩慢にし、陶酔感をもたらし、集中するのを困難にします。

一部のエールとビールの醸造業者は酒飲みを喜ばせるためにこれをエールやビールに添加して、あたまにくらくらとくるようにする。するとそれによって、のむ人間はいくつかの素養にしたがい、恐ろしい酔い方をしたり、無茶苦茶な酔い方をしたり、気ちがいじみた酔い方をしたりする。


「アロマテラピー 芳香療法の理論と実際」ロバート・ティスランド


リラックス効果にも強弱や段階があります。


クラリセージの弛緩作用はかなり強力なので、お酒で神経がゆるみ気分が解放されているときに、さらなる弛緩作用でおいうちかけられると、顕在意識をたもっていられなくなる、ということではないかと。


個人的な体験談として東京ぐらしをはじめたばかりの若かりしころ、すくないお給料を節約しつつようやく貯めたおかねでエアチケットを買うことができ、ひさかたぶりの帰郷を楽しみに指折りかぞえていたことがありました。


当日の朝、日課にしていたセルフマッサージになぜだかクラリセージを選び、なぜだかとつぜんの研究魂に火がついて、1回分のオイルに30滴ほどの精油をいれて全身の皮膚にぬりこみました。


オイルは15mlくらいで、精油は0.05ml×30なので1.5mlくらいです。


およそ10%濃度ということですが、とうじからアロマで自分実験をよくしていたわたしは、ラベンダーやローズマリ―の20%濃度、30%濃度も体験ずみで(自己責任のもとですょ)、ハンドリング不可なことがおきるとは考えもしていませんでした。


日課のセルフマッサージをおえて身支度をととのえ、飛行機の時間まですこしあるのでベッドに腰かけてお茶をのみました。


とうじのおうちは1ルーム、ごはんを食べるのも本を読むのも、なにもかもベッドが椅子がわりです。


いつどんなふうに意識を失ったのかまったくおぼえていないのですが、気がつくとベッドによこたわり、窓のそとは夕暮れにそまる空の色とカラスの鳴き声が...。


電話も引けないビンボな若者だったので、トボトボと夕闇の街をあるき公衆電話から「ねすごしちゃってさぁ、飛行機のれなかったのさぁぁ」といいつつ号泣w(いまでは笑えるおもいで話に)


東京のしきたりになかなかなじめず、未熟さゆえに能力もおいつかず、緊張感と集中力全開でまいにち残業つづき、土日返上出勤してようやくとれたお休みだったということも反動となり、クラリセージのリラックス作用に拍車がかかって眠りこんでしまった、というところでしょう。


にしても、おそるべしクラリセージ。


飛行機代と帰郷休日をかえせ、このオニめ!と若輩者のわたしはしばらくのあいだ、クラリセージにやつあたりをかましていたのであります。


*日本のアロマ協会が提唱しているオイルマッサージの精油濃度は1%ほどで、用量をまもれば快適なつかいごこちです。


*クラリセージは妊娠時に使用を避けるという禁忌事項のある精油です。




三つ巴のヒーリングシステム


クラリセージの和名はオニサルビア。


ほかのセージにくらべて茎が太く、大きく育ち、花穂も葉もおおきいので「オニ」がついたのでしょうか。


こまかい毛でまもられるように繁る葉は大地近くに密生し、花は天たかく上方にむかって咲きほこり、花と葉の対照的な立ち姿は陰陽分離した両極端なもののバランスをとる力を、クリアに顕しているかのようです。


学術的にクラリセージはアキギリ属(学名表記ではSalvia属)と分類されています。


セージはもちろん、2017年に発表された学術的見解にもとづき、ローズマリーもマンネンロウ属からアキギリ(サルビア)属にかわりました。


シソ科最大の植物属で世界に約900種が確認され、学名 Salvia(サルビア)は、ラテン語の salvare(サルバーレ)、健康、治癒、救いという意味にちなんでいます。


セージのなかま


↑「ハーブの写真図鑑」日本ヴォーグ社



クラリセージはいわゆるセージの香りもほのかにただよいますが、ほとんど花のような心地よい香りです。


香りノートはゆっくりで香水の保留剤にもなり、ナッツのような新緑茶のようなフシギな甘さがあとをひきます。


ゆったりとまとわりつくような甘い香りでありながら、ふと気がつくと光の速さで神経の1本1本に浸透して、こりかたまったからだの部位から、力をうばっていくような感覚があります。


アロマテラピーの先達が、陶酔感にひたり、体質によっては中毒すると教えてくれたハーブのひとつで、空間にただよう香りが、もしもクリアに「見える」としたら、クラリセージのフシギな甘さはおもちみたいにねばつく繊維の束っぽい、と感じます。


自律神経

↑は、「からだの地図帳」講談社編から。


自律神経の図解写真です。
(右側)副交感神経優位になると、はたらきだす器官がイラストになっています。
(左側)交感神経優位になると血流は筋肉の方へいきます。


副交感神経が優位になると、内臓は消化活動にいそしみ、排泄器官と連動して体内から不要なものを排泄します。


呼吸器や循環器系を動かす筋肉群はゆるんで、呼吸や拍動はゆったりと波うちます。


唾液が分泌され、ひとみは涙で潤い、あごの力がぬけて頭部領域が解放され、インスピレーションを受けとりやすくなります。


交感神経が優位なときは、筋肉のほうに血流があつまるので、機敏にうごけるし、大きな声をだしたり目の焦点を絞って獲物のうごきを追うことも可能です。


現代社会では道をあるいていたら猛獣にでくわして、逃げるか戦うかを一瞬で判断し対応する、なんてことは起こらないですが、交感神経の発動は、そのような古人の経験値によって積みあげられ、獲得されてきたとする説があります。


ストレス対象はもちろん猛獣のようなわかりやすいものばかりではありません。


衣食住をあたえられることとひきかえに、知ることや、経験すること、未知なる世界を冒険する自由を奪われるのも、おなじように心身をむしばむストレスになるものです。


みずからの翼で飛ぶことを知った鳥は、かごのなかでは生きてゆけません。


集中と弛緩。


陰陽どちらの活動にも溺れずに、きもちよくスイッチすることで快の波動を絶やさぬよう、クラリセージをはじめとする薬草・ハーブたちは、古代から人類のサポートをしてくれているのだろうな、と思います。


草(くさかんむり)を楽しむと書いて薬。


もともと薬は植物の葉や根や花を、煎じたり、汁をしぼったりして病気のときにつかわれてきました。


学術的フェイズで説明すると植物に含まれる香り物質(精油)の正体は、約40万個の化学物質です。


そのうちの、目にも見えないわずかな質量が鼻からすいこまれ、脳に伝達されて気分を変容させます。


気分が変容する背景には、三つ巴のヒーリングシステムがすこやかに機能していることが要にあります。


1.交感神経と副交感神経がどちらかにかたよることなく、軽快にスイッチできること。


2.ホルモンが過多になったり減少したりせずに、サイクルや状況に合わせて分泌できること。


3.免疫力を維持する白血球が少なくなったり過剰反応したりせずに、外敵にたいして適切に対応できること。


植物がはなつわずかな香り成分は視床下部という脳器官に親和して、自律神経・ホルモン・免疫系のバランスをととのえるちからがある、というのがアロマテラピー代替療法のひろがりをささえてきました。


自律神経、ホルモン、免疫のはたらきは、視床下部とよばれる目のうしろ、頭部のまんなかあたりにある器官が司令塔になっているので、どれかひとつでもアンバランスになると一蓮托生でガタガタとくずれてしまいます。


内分泌器官とホルモン

↑「からだの地図帳」講談社編



匂いのおおもとは古い皮質、嗅脳などともいわれる大脳辺縁系の興奮で発現し、大脳皮質がこれだと認識する。

辺縁系から自律神経の中枢、摂食、体温、浸透圧、生殖などをコントロールする視床下部にインパルスが到達する。

さらに正中隆起、下垂体門脈を介して脳下垂体にいくので、内分泌臓器の働きにも匂いが影響してくることになる。


「アロマテラピーの科学」鳥居鎮夫



アドレナリンを全開放出して、闘争・逃走本能のはざまでゆれうごきながら、交感神経に極振りしつつ東京生活をおくっていたわたしは、クラリセージの陰陽バランス力によって、副交感神経にストンとスイッチがはいってしまい、意識を失うように眠りこけてしまったのだろうと思います。


そうして、それこそが古人より受けつがれてきた薬のはたらき。


自律神経を軽快にスイッチさせ、ホルモンや白血球が適切な分量で体内をめぐり、恒常的に機能を維持できるよう体温や呼吸数、心拍数をコンフォートゾーンに導いてくれる。


神経を麻痺させて痛みを感じなくさせたり、排泄するべき毒素を出しきらないうちに熱を下げたり下痢を止めたりするのは、植物がもつ数十万個の成分のうち、ひとつ、ふたつの効能を研究合成した薬理作用で、草を楽しむフェイズから別次元に移行した、実験世界のいとなみのように感じています。



薬草の底力


陰陽バランサーとしてのクラリセージの洗礼を、初手からはなはだしく受けてしまったわたしは、その後のつきあい方に工夫を凝らすようになりました。


精油ってすごい、とシンプルに思うようになった事例はいくつかありますが、クラリセージによるドタバタ劇はもちろんそのうちのひとつで、怪我の功名をいかして、比較的はやい時期に有効活用できるようになった精油のひとつでもあります。


クラリセージの「クリア・アイ」は、たんに視力のことをいっているわけではないのだろうな、と考えるようになったのも、ヒトのからだに作用してやすやすと意識のハンドリングをうばい、気がついたときには心身バランスをととのえてしまう薬草の底力をストレートに体験できたおかげと思っています。


薬草といわれる植物には、人智をこえたナニモノカが含まれていて、すべての成分をまるごととりいれることで、ヒトの顕在意識下では処理不可能なことをぜんぶひきうけ、眠りについているあいだにホメオスタシス魔法をかけてくれる。


地上生活は交感神経と副交感神経のあいだをいったりきたりしながら、興奮と弛緩のあいだでそのふり幅をひろげていく練習場みたいなものと感じています。


緊張と集中力の精度をあげていく過程でも目がくらまず、ディプレッションの極み状態でも目はくもらず、全集中の呼吸や全弛緩の境地にすこしづつなじみながら、目のうしろにかくされた脳機能がクリアにはたらきつづけることができるようにと、クラリセージはオニにもキリストにもなって、わたしたちの経験値を底上げできるよう、地上に遣わされたサルバーレなのではないかと想像しています。


☆☆☆


お読みくださりありがとうございました。
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