aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

レモン 植物界の古典派

おうちの常備薬


レモンの香り成分は皮にたくさん入っているので、精油をふだん使いしていない人でも、レモンの香りはいつでも楽しめます。
国産、無農薬、防腐剤・ワックス不使用のもので、すりおろし器で皮を刷り下ろし、塩に混ぜておくと使い勝手が良いです。
レモンピール塩は身体を洗うのにも、サラダにふりかけて食べても美味しいです。


おうちの常備薬 レモン



アロマ業界ではレモンの果皮に含まれる代表的な香り成分リモネンについて、血行を促進し代謝、消化活動をアップすると考えています。
レモンらしさを象徴する香りのシトラールは鎮痛、鎮静作用があり、高ぶった感情を落ち着かせてくれます。
そして果汁がもっているクエン酸はもともと人の体の中にも存在し、クエン酸回路という、エネルギーを生み出す代謝経路にもなっており、ミネラルの吸収を助ける働きがあるといわれています。


体調不良のお助けマンみたいなレモン。
その形も、色合いも、なんというか心をぱっと明るくして、こども心をくすぐるような、不思議で神秘的な果実です。


果皮に多く存在する精油成分は、果実が傷まないよう消毒殺菌作用をもち、と同時に鳥や動物を引き寄せる良い香りでもあります。
だから人にとっても、消化機能を高める香りとなるわけです。


レモン様の香りをもつハーブはたくさんあり、レモングラスをはじめとして、レモンバーベナ、レモンバーム、レモンマートル、レモンユーカリ、レモンミント等々、イネ、シソ、クマツヅラ、フトモモ科へと広がっています。


レモンの形を図形で表す場合、なんという言葉がふさわしいのか調べたことがあるのですが、アーモンド形、レンズ型、しずく型、涙型、ラグビーボール型、ヴェシカ・パイシス等々、色々候補はあったものの、やはりレモン型は「レモン型」といえば万人わかる説で落ち着きました。


特殊なのに奇抜じゃなくて普遍性がある、さらに他に似ているものがいない植物って、ちょっと珍しいと思います。



レモンをひとつ、ポケットに入れて


フランスの軍医ジャン・バルネ博士(1995年没)は、精油の効能を化学的・医学的に研究した第1人者で、大戦中に負傷兵の治療に精油を使ったことでも有名です。


レモンの精油が空気中の菌をどのくらいの時間で殺菌するか、研究結果も残されています。 そうした先人のおかげで、いまアロマテラピーを楽しく学ぶことができ、生活に生かせることを、本当に感謝してやまないのですが、レモンに限らずハーブの歴史は、呪術や魔術、占星術など非科学的といわれる領域と結びつき、現代においても、アロマテラピーは非科学的であるというレッテルを貼られることは少なくありません。


ただ個人的にはそのくらいの、ぼんやりした立ち位置にあったほうが、ハーブとのホリスティックな関係性が築けて、いいんじゃないかな、とも思っています。
成分や効能だけをとりあげる学術的な見方では、はかりしれないことが山ほどあり、現代人の制限つき脳みそではわからないことだらけ、見えないものだらけ。
そんなことを含めて、ハーブとはホリスティックにつきあわないと、せっかくの縁も宝の持ち腐れというものです。


学術的に解明できないことが満載でも、直感がいいねと囁き、いのちが喜んでいると感じるものは、ちゃんと後世に伝えられてゆきます。
レモン型のように残るものは残り、ほかのハーブにもレモン様の香りがあることを知り、多種多様な広がりが受け入れられ、後世において、いつのまにか普遍性を獲得してゆきます。



レモンをひとつ、ポケットに入れて、ときおり香りを嗅いだり、ぼんやり眺めたり。
レモンがあるってだけで、いい知れぬ幸福感に満たされて、手のひらのなかに塩梅よくおさまる感覚や、その軽すぎず重すぎない質感が、いいようのない安堵感をもたらしてくれる。


中世ヨーロッパを中心にレモンを描きまくっていたという画家たちも、きっとレモンの魅力、神秘性に、わけもなく惹かれていたのだろうと想像しています。



明晰さと線引き


古典として受継がれるものには普遍性があります。
一過性の流行ものと違い、多くの人々の思想や印象に共通する概念を刻印して、100年、1000年の時を超え、地上にひとつの集合的な型を作り出します。


レモンは清涼感とともに明晰さをあたえ、リフレッシュできる香りです。


香りもまた他の精油と違って、感じ方、印象、気分的な変調に大きな個人差はほとんどありません。
レモンの香りという、ひとつの普遍的な型が完成されているように思います。


明晰さによって、自分と周囲の境界線を明確にし、見えないけれど確かに感じる、パーソナル・スペースを再認識できるレモンの香りは、十把一絡げ、烏合の衆と揶揄される大衆心理路線から距離を置いて、自分がいまどこに、どんな風に立っているのか再確認したいときに重宝します。


自分が本当にいたい場所、本当に必要なもの、本当に食べたいものを、安全なパーソナルスペースのなかで屹立し、明晰な頭で探したいとき、レモンの香りは役に立ってくれると思います。



塩風呂だいすき


レモンピール塩は食べておいしく、夏は自家製バスソルトにすると暑気払いにもなります

さらしやガーゼに入れてからだをやさしくこする使い方がおすすめです。
塩はもちろん天然塩で。あら塩ではなく粒子の細かい塩の方が洗いやすいです。
わたしはさらしなど使わず、直接塩でこすったりもしますが(お肌の弱い方におすすめはできません)、皮膚が柔らかくなって洗い上りが気持ちよいです。


バスソルトの歴史は古く、古代ギリシア「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスは、海水を病や傷の治療に使用してきた記録を残しています。


天然塩に含まれるミネラルは、肌の表面に膜をつくり、水分の蒸発を防ぐ役割があるといわれています。
血行をよくし、発汗を促すことから体内の毒素を排泄する、デトックス効果も期待されています。


発汗により毛穴の汚れが排出されると、肌を守るための皮脂が正常なサイクルで分泌されるようになり、肌の表面に天然の油分と水分による絶妙な膜が維持されやすくなるので、肌のターン・オーバー、つまり循環がよくなって、天然の皮膚バリア機能が保たれるというわけです。


少々大雑把な比喩かもしれませんが、地球に生きる人類を、惑星地球のフラクタルな存在と考えるなら、人の皮膚と地球の地表は同じような循環システムを有しているのかもしれません。


ハーブやソルトの力で発汗を促せば、ほんらいあるべきターンオーバー、お肌の健全な循環システムがとりもどされ、毛穴でつくられる皮脂分と汗腺から出てくる水分で、天然保水力も向上します。


人の肌は、約28日ごとに生まれ変わる循環システムをもっています。
循環サイクルを正常に保てるよう、お肌もベランダのハーブたちも、水はけのよい土台づくりを心がけています。



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Shield72°公式ホームページ

*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。