aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

うつぼ草/夏枯草 神のいれもの

花枯れて薬となる


夏は植物にとっていちばんの成長期です。
野山も平地も河原にも、最大出力で緑が生い茂り
競うように花を咲かせます。


そんななか、まるで盛夏に背を向けるように
花枯れてしまうのがうつぼ草です。

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1年を24等分して
四季折々の花鳥風月をあらわす24節気では
うつぼ草が夏と冬に登場します。


夏至の候、乃東枯(なつかれくさかるる)

冬至の候、乃東生(なつかれくさしょうず)


乃東はだいとうと読み、うつぼ草の古名です。
別名夏枯草(かごそう)ともいい
夏に花だけ枯れるのが特徴です。


日本では古くから民間薬として使用されてきました。
花枯れる夏に摘むものが特に薬効が高く
茶色く枯れた花穂を集めて陰干しします。
消炎作用、利尿作用が高く
むくみや残尿感、排尿不快感
泌尿器系のトラブル、高血圧にも良いとされています。


煮だした液をガーゼに浸みこませて湿布すると
打ち身、ねんざ、腫物に効果があり
うがいして使うと、口内炎や扁桃炎によいとされています。


タンニンを多く含むので
消炎には即効性を感じられると思いますが
作用が強すぎるので継続使用は避けた方がよいようです。



うつぼ草は中国の最古の医学書「神農本草経」に収載され
水戸黄門こと徳川光圀の時代の「救民妙薬」に
「夏枯草、うつぼ草ともいう」と記載されています。


ヨーロッパの近種タイリンウツボグサは花穂がひとまわり大きく
古代ローマ時代の医者ディオスコリデスは
煎液を喉頭炎、扁桃腺炎に使用していました。


英名はself-heal(自然に治る)
またはheal-all(何でも治す)でありながら
現在ではほとんど利用されていないといいます。



矢は「うつぼ」、たまは「うつほ」に


北半球の温帯地方を中心に
日あたりのよい山野、河原でよく見かけるうつぼ草は
つくしん坊の頭みたいな花穂をまっすぐに伸ばし
上のほうから開花して上から順に枯れていきます。


うつぼ草の花穂は
弓矢を入れる靭(うつぼ)に似ていることから
うつぼ草と呼ばれるようになりました。


箙 (えびら)- Wikipedia


矢を入れて肩や腰に掛け、携帯する容器のこと。

矢筒。

「やなぐい」とも読む。

靫(うつぼ、ゆぎ)とも呼ばれる。


矢を入れる箙(えびら)・靫(うつぼ)は
占星学のサビアン、双子座9度
「矢で満たされた矢筒」というシンボルを想起させます。


うつぼといういれものは
矢が満たされていないと空っぽ(うつほ)で
・意識をどの方向へ射出してよいかわからない
・興味を向けられるターゲットがいない
・意識が空中分解して空虚になる
という状態を象徴しています。


矢はターゲットがあってこそ放つことができるもので
的(興味)が定まらないと、矢(意識)を射ることはできません。


うつぼに入る矢は的となる興味の対象を
明確にしたときの意識を象徴しています。


そのためにいったん矢のない状態をつくることが必要で
いれものを空虚(うつほ)にすることで
的が明確になり、そこに向かう矢(意識)がつくられます。


今風にいうと断捨離してスペースをあけると
ほんとうに必要なものがわかる、ということでしょうか。


この通過儀礼は
日本の民俗学者、国文学者、国語学者であり
釈迢空(しゃく ちょうくう)の名で詩人・歌人でもあった
折口信夫(1887-1953年)の「霊魂の話」で
面白く解説されています。



日本人は、ものゝ発生する姿には、原則として三段の順序があると考へた。


外からやつて来るものがあつて、其が或(ある)期間、ものゝ中に這入つて居り、やがて出現して此世(このよ)の形をとる。


日本の神々の話には、大きな神の出現する話もないではないが、其よりも小さい神の出現に就いて、説かれたものゝ方が多い。

此らの神々は、大抵ものゝ中に這入つて来る。

其容れ物がうつぼ舟である。


ものがなる為には、ぢつとして居なければならぬ時期があるとの考へもあつた様だ。


古く日本には、神事に与る資格を得る為には、或期間をぢつと家の中、或は山の中に籠らねばならなかつたのである。


村の若者を山籠りをさせて、男にする事が、其一つであつた。

此時期が、後の山伏しの精進・行と言はれるものであつたので、山伏しの籠りに行くのは、即、若者になりに行つた風習の名残りである。


此は、神の魂が育つのと、同じことになるので、他界から来る「たま」をうける形なのであつて、さうする事によつて、村の聖なる為事に、与る資格が得られる、と考へたのである。


容れ物があつて、たまがよつて来る。

さうして、人が出来、神が出来る、と考へたのであつた。



からっぽになる日


夏至は一年でいちばん日の長い一日。
冬至は一年でいちばん日の短い一日。


陰陽でいうと夏至は陽極まり陰に反転する日で
冬至は陰極まって陽に転ずる日です。


いってみれば天を突き上げるほど高揚した先と
底を突き抜けるほど内省したその先に
ほんとうに必要な矢となる、意識の射出方向
興味の対象がみえてくる、と考えることもできます。


やり切った。
成し切った。
為果てる。


夏至と冬至の陰陽反転は
もうそれ以上先に進むことはできない
というところで転じます。


うつぼ草が夏至と冬至の花鳥風月に取りあげられたのは
陰から陽に、陽から陰に反転する時節になぞらえ
為果てるそのとき、人は「うつほ」となって
はじめて神の「みたま」のいれものとして
準備が整ったことを表す。
そんな秘密を伝える薬草だったのかな、と
妄想しています。


うつぼ草を民間療法として
古くから飲用している村のある人は
うつぼ草を「小便薬」と呼んでいました。
「信じられないほどドバドバ小便が出るよ」と
楽しそうに教えてくれました。


そのとき体内も一度からっぽにするごとく
水の入れ替えを促進する薬草なのかな、と思いました。


☆☆☆


お読みくださりありがとうございました。
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