aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

パセリ 食べる?食べない?

岩場のセロリ


パセリといえば日本では
葉の縮れたモスカール種を想像します。
葉縮れパセリは品種改良によって生まれた種で
カーリーパセリと呼ばれています。

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とはいえ葉縮れパセリは、ほとんどの方が召し上がらず
最近ではお残しものの自虐ネタ象徴みたいに扱われはじめて
試行錯誤されている飲食店もちらほらお見受けします。


大阪宅近所にある洋食屋さんでは
立派なクレソンがどーんと添えてあり
はじめて行ったとき思わず
「パセリじゃないんですね」と声が漏れてしまいました。
「ハイ、お残しになるお客様が多かったので変えたんですよ」と
律儀にお答えいただきペロリ美味しくいただきました。


イタリアンパセリ

↑ 写真は昨年、わが家のベランダで、育ちに育ったイタリアンパセリ。
食用のとは別植えして、花が咲くように放任後、記念にパチリ。


地中海沿岸地方原産、セリ科のイタリアンパセリは
日本でお馴染みのカーリーパセリより
香り風味ともにワントーンやさしくて使いやすいです。


イタリアンパセリは β-カロチン、ビタミンC、カルシウムなど
栄養価の高い香味野菜として使われてきました。
伝統レシピのブイヤベース定番ハーブでもあり
日本でいうところのミツバ的ポジションでしょうか。

イタリアンパセリ


学名の Petroselinum はギリシャ語の石(ペトロ)と
セロリ(セリノン)をかけたことばで
岩石の多い乾燥した土地に生育することから名づけられました。


古代ギリシャではもっぱら薬用ハーブとして利用し
ヒトの食用歴史は古代ローマ時代から。
日本では18世紀ころ、長崎から栽培がはじまります。


パセリの葉を乾燥させて煮だしたハーブ水は
頭皮や皮膚をさわやかに強壮し
利尿作用、消化促進作用があり
筋肉強壮剤として、またアレルギー抑制やリウマチの緩和剤
ねんざや切傷に葉をあてる療法にも使われてきました。



パセリとヘンルーダの場所にいる


ヨーロッパでは、パセリを薔薇の近くに植えると
薔薇がよく育ち、香りもよくなると伝承されています。


ギリシャでは、畑や花壇をつくるとき
はじめにその縁をパセリと
ヘンルーダ(ミカン科、別名ルー)の植え込みからはじめ
境界線をととのえるという伝統的な作法があるのですが
具体的な内容にとりかからずスタート地点にいることを
「パセリとヘンルーダの場所にいる」と表現するそうです。


南方熊楠 きのふけふの草花 


パースレイ

畑を作るに先づパースレイとヘンルウタをその縁に植た。

因つてまだ実行に取かゝらぬといふ代わりに、やつとパースレイとヘンルウタの段だといつた。


これからはじめることの輪郭を描き
あとは実行、着手するだけ、ということなのか
準備できたけど、いつまでも実施しないことを表すのか
諺の背後にあるニュアンスには辿りつけないのですが
なにかしらの創造行為をはじめる準備はととのった
という感じなのかな、と思っています。



パセリを育てることにまつわる迷信や
奇妙な伝承はたくさんあります。
・種まきは聖なる金曜日に
・パセリは芽を出すまえに悪魔の元へ7回か、9回、往復する
・パセリの植え替えは家人を不幸にする
・パセリを人に贈ると相手は不幸になる
・パセリを摘むときに人の名を口にすると呪いになる
・パセリを上手に育てられるのは魔女だけ
・夢にパセリが出てきたら食べるとよい前兆、眺めるだけなら悲しい恋の結末が待っている
などなど。


ベランダで育ちに育ったハーブは
たいてい乾燥ハーブにして、お裾分けしたりしますが
パセリだけは差し上げたことがありません。
他国の迷信といえど、古人の口承は尊重せねば
と思っています。(怖がってもいますw)


世界中でたくさん使われているキッチンマスト・ハーブのうち
過去記事でローズマリー、セージ、タイムを紹介しましたが
パセリは奇妙で複雑なハーブゆえ、なかなかまとめられませんでした。


ローズマリー 海のしずく - aroma72 ハーブ天然ものがたり


イギリスの民謡、エルフィン・ナイトは

サイモン&ガーファンクルによって

スカボローフェアという曲になりました。

「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム」の一節で有名な曲です。

(しばらくのあいだガーデン散歩の歌と思っていました)

映画「卒業」によって世界中に広がり、曲の背景も有名になりました。



アルケモロスって誰?


「パセリの紹介をするとき避けて通れぬ死の紋章」
と、アロマニア友人内で話題になるアルケモロス。


ギリシャ神話は系譜と名前が複雑なので
とりま、登場人物をしぼり込んで整理してみます。



1.女だけの島リムノスを治めた女王、ヒュプシピュレ


2.ネメアの王


3.ネメアの王の息子(赤ん坊)オペルテス



ヒュプシピュレは女王の座から降ろされて
島の女たちに奴隷として売りさばかれます。
ネメアの王が買って、自分の息子オペルテスの乳母にします。


ヒュプシピュレはパセリの生えているところに
オペルテスを寝かせて、ちょっと目を離したすきに
オペルテスは大蛇に食い殺されます。
予言者がオペルテスを「アルケモロス(非運を始めた者)」と呼び
あるいはその血から、パセリが生えたという説もあります。


パセリといえば「勇者アルケモロスの血より生じた」と形容されますが
ネメア王の息子の死を悼み、つけられた名で
神道でいうところの「おくりな」のような感じです。


悲運を始めた者、というなら学名と同じペトロさんも
キリスト12使徒のリーダー格でありながら
わが身可愛さに磔刑になったイエス・キリストを
「そんな人知らない」と、うそぶいて
逃れた苦しさに悔悟し、布教の旅を続けた果てに
晩年は逆さ十字にかけられて殉職されました。


一見すると凶事的背景をもつハーブなので
魔女でなければ扱えない、というような風説も
口承され、流布されてきたのだと思います。


神話世界では「悲運を始める象徴」
現世では、味よし、香りよし、効能も素晴らしい
世界で最も消費されるハーブのひとつとなりました。



土元素界のさらに下へ


アルケモロスは大蛇(筒)にとりこまれ
地上世界と神界のパイプになったのだと考えています。


アルケモロスの死を悼んで始まったとされる
ネメア祭(戦士のための競技会)は
BC6世紀ころに存在したことが確認されているので
「悲運をはじめる者」が地上世界に登場したのは
古典期のBC8~7世紀くらいではないかと。


悲運とは分化すること
自らのエネルギーを分岐して
創造する行為と考えているので
神々の大降下時代がはじまるよ
という意味ではなかろうか、と。


天界意識、恒星意識

神話に登場するキャラクター的な神々

天使や妖精、精霊

王族や神官など、出自を知る者たち

出自を忘れた人間


星々の世界から炎へ、空気へ、水へ、土の層へと降りてゆく段で
みずからの出自を忘れてしまうほど分化され
もどり道がわからなくなってしまうことを含めて
「悲運のはじまり」と呼んだのではないかと思っています。


アルケモロスを飲みこんだ大蛇は
土元素・固形化・物質化の最奥にある
岩場や砂利までパイプを通しちゃって
アルケモロスのスピリタス(血)によって
Petroselinum (岩場のセロリ)を生み出したのではなかろうか、と。



アルケモロスを不注意で死なせてしまったヒュプシピュレは
半神ディオニュソスの孫にあたります。
そしてヒュプシピュレという名は、高き門という意味で
神界から岩・砂利のフェイズまで
長くつないだパイプのことを意味しているように思います。


ギリシャ時代以前には、ネメアには王族を守る象徴として
ネメアの獅子がいましたが
ギリシャ神話でヘラクレスに打ち倒され
星界に戻ってしまい、不在でした。


パセリとの組み合わせで、境界線を示すヘンルーダは
猫が嫌がる香りをもつハーブ、という通説があり
ネコ科動物がアルケモロスを星界に連れ戻さないよう
阻止しているのかな(と、想像はふくらみます)。



☆☆☆


お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
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