aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

乳香/フランキンセンス 精油界のBOSS

共生を祈ります


「フランクに話そう」というと
気楽にハラわって話そうよと言ってくれてるんだな、と思います。


フランキンセンスの語源はフランク(本物の、真の)
インセンス(香り、薫香)からきています。


乳香



乳香は木の樹液で、主にカンラン科ボスウェリア属の木から採油します。
精油界のBOSSと呼ばれる乳香、学名のボスウェリアはボスつながりで覚えました。


精油となるボスウェリア属は約5種類ほどで、アラビア半島南部、ソマリア、エチオピア、ケニア、エジプトなどの一部アフリカ大陸に自生する希少な樹木です。
香りや質は、産地・種によって微妙にちがいます。


伝統的な採油方法は、幹をうすく削いで、表面からにじみ出た小指の先ほどの塊を採集します。
樹液はかたまると乳白色になるので、乳香と呼ばれます。
上記写真は20年以上むかしに頂いたものですが、いまでも呼吸器にサァッと一陣の風を吹かせるような、ほんのり甘さの混じった樹々の香りがします。


樹液、樹脂は木にとってかさぶたのような役割をもっており、傷を保護して治癒するためのものです。


乳香樹は絶滅が危惧される種として注目も高まっており、現在はフランキンセンスを守る運動も盛んで、切り込みを入れる回数の制限など、提唱している団体もあるそうです。
ヒトのからだで考えると、採血を年に100回も200回もされたら参ってしまうことは、いわずもがな。
1本の木に切り込みを入れるのは、年に12回までというガイドラインもあるそうですが、かなり辺鄙な場所に自生する樹々もあり、管理も一筋縄ではいかないようです。


増やすのがむずかしいとされる乳香の木、
ウィキペディアには「最近の研究で今後50年で約90%減少すると予想されており、持続は不可能と考えられている」という一文がありました。


乳香の木は気温が15度以下になるエリアでは育たないそうで、むかしから自生地の特別な貿易品目となっています。
同じ重さの金と取引されたこともあるほど、貴重なものでした。



化粧・装飾は、自然療法


乳香は古代エジプト時代には、ミイラの防腐剤として
また神に捧げる薫香として使用されてきました。
キフィ(聖なる煙)という、複数の香り植物から調合された香料は特別なもので日の入に焚かれます。


日の出に乳香
正午に没薬
日没にはキフィが焚かれたといいます。


乳香は太陽神ラーの汗であり、その香りある煙は太陽神ラーとともにあることを示し
没薬は太陽神ラーの涙
キフィは瞑想のために焚くものだったといわれています。


日の入の刻になると街中にキフィの薫香が漂い、瞑想と祈りが捧げられる。
ドリームタイム、ドリームランドとの2重生活を彷彿とさせるキフィ習慣は、どんな暮らしぶりだったのかと、想像するだけで呼吸が深まります。
キフィは悪魔よけとして、歴代ファラオ達の寝室で焚かれていたそうです。


キフィのレシピは多数ありますが、有名なものとしては
・BC3400年以前の文章を書き写したと考えられているパピルス、最古の医学書と言われている Ebers Papyrus(エーベルス・パピルス)に記されたもの。


・エドフ神殿の壁画に記されているもの。
 エドフ神殿は、ハトホル女神とホルス神に捧げられた最大の神殿
 年に一度ハトホルがエドフのホルスを訪ね、聖なる結婚を示す神殿と信じられてきた場所


その他にも古代エジプト神官がのこしたレシピや
歴代のエジプト王たちが使っていたとされるレシピなどがのこされています。


代表的なレシピの一例として
乳香
没薬
ミント
レモングラス
アカシア
レーズン
ヘンナ
ジュニパー
ピスタチオ
カシア桂皮
シナモン
松脂
オレンジ
ローズ
蜂蜜
ワイン
などがあります。


焚いた後の灰(スス)は皮膚に塗って化粧品や虫よけ、薬としても使われていました。
アイシャドウのはじまりは古代エジプト人といわれていますが、強い太陽の光から目をまもり、魔除け・虫よけ・細菌防止の目的で目のまわりをふちどりました。


古代エジプト人の化粧はとどのつまり自然療法で
壁画や美術品にあるとおり、女性も男性もアイライナーばっちり使っています。
アイライナーはコフと呼ばれ殺菌作用を重視するものでした。
代表的な作り方として、没薬、乳香を焚いて微細なススにして
粘性の強い植物油に混ぜるレシピがのこされています。


青や赤などの色物には、主に鉱石を砕いて混ぜたものが使われました。
他人のねたみや恨みがこもった視線は、目鼻口(からだの穴)から入ってきて、病気や死を招くと信じられており、悪い視線をうけてもはね返せるようにしていたとか。


物質性がいまの時代ほど固定化しておらず、魂も自在に脱魂して、いろんな生命種に出入りできた、と想定するなら、いろいろ工夫が必要だったのかもしれません。



BOSS


千夜一夜物語(アラビアンナイト)は、AC220年 ~ 650年頃にその原型がペルシャ語で記されたものがはじまり、とされる古い説話集です。
金銀、宝石に彩られた幻の都ウバールが登場し、乳香樹の自生する広大な土地が広がる、伝説の都市と思われてきました。
それが90年代に入ってからオマーンのドファール地方で発見され、「乳香の道」として世界遺産に登録されました。



新約聖書ではイエス・キリストが誕生したとき、その御印を空に見た東方の3賢人が厩を訪ね、黄金と乳香と没薬を贈り物としてささげたという記述があります。


乳香は旧約聖書にもたくさん登場します。
シバの女王が古代イスラエルのソロモン王(BC約970年ころ)への贈り物として黄金、宝石、白檀や乳香を贈ったという逸話は有名です。


乳香樹


BOSSという概念は時代とともに変化し、日本では親分、親方、顔役、といった名称と同義語になりつつあり、なんとなく時代遅れな印象もつきまといますが、BOSSには圧倒的な実力がともない、世襲や忖度、権力者内通の順番まわしみたいなものでは務まらない、凄みのようなものがあると感じます。


「フランクにいこう」と語りかけることができるBOSSは真の実力者。
実力があるから慇懃無礼にふるまう必要はないし、膝を折って、腹を割って、関係性を築いていくなかで、情も、知性も、道徳心も、尊敬の念も育まれる。


ニュースにもエンタメにも、そんな気骨のあるBOSSを目にする機会は、とんとご無沙汰な気がします。


国際自然保護連合の、準絶滅危惧種リスト入りしてしまった精油界のBOSSと呼ばれる乳香しかり、BOSSは種を問わず、世界的絶滅危惧種になってしまったのかもしれません。




☆☆☆




お読みくださりありがとうございました。
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