aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

どくだみ 水精霊の救世主

日本三大薬草のひとつ


どくだみの別名はたくさんありますが、蕺(しぶき)草、(生薬名では じゅうさい)が正式和名です。


江戸時代中期の百科事典「和漢三才図会」で、どくだめと記載されてから、どくだみが俗称になったそうですが、もちろん毒をもっているからではなく、毒を止めるという意味で命名されたようです。


どくだみ



漢方では魚腥草(ぎょせいそう)
日本では乾燥した葉を十薬(じゅうやく)といい、ほかにも地獄蕎麦(じごくそば)、馬芹(うまぜり)の名があります。
日本に現存する最古の本草書、平安時代の「本草和名」や「和名抄」などの書物には之布岐(しぶき)と収載されています。


湿った陰地に群生して、特有の匂いがあり、べんじょぐさとも呼ばれます。
ヒメジョオンと1、2位をあらそう日本の蔑称ハーブともいえますね。
不名誉な名前もなんのその、ゲンノショウコやセンブリとともに、日本三大薬草のひとつで、田舎でも都会でも旺盛に生育する繁殖力には目を見張るものがあります。


どくだみ特有の香り成分は、アルデヒドに由来するもので、生臭いと感じます。
香り成分は揮発するので、乾燥させたり熱を入れると匂いはほとんど気にならなくなりますが、東南アジア、特にベトナムでは生春巻きや魚料理にそのまま使う食用葉です。


カメムシ臭がするといわれるパクチーしかり、ところ変われば芳香となり、臭気にもなる。
香りを受けとるレセプターは、記憶をつかさどる脳機能、海馬に深くかかわっているので、個人差もあれば、食歴による民族差もあり、一概に臭いとは言いきれないものです。


生のどくだみが持つ香り成分は強力な殺菌作用があり、主な精油成分デカノイルアセトアルデヒドは、抗生物質のもとになったペニシリンをしのぐといわれるほどです。
皮膚のかぶれや完全治癒がむずかしいとされる真菌による疾患(みずむしやたむし)の特効薬として、民間療法ではつとに有名です。
名の由来にある通り、解毒、代謝促進、毛細血管の強化、むくみ解消、利尿、便秘解消と、デトックス効果も高いです。



クサの宝庫、思い出の「裏庭」


どくだみのマインドマップをひっぱり出してみました。(十数年前のもの)
札幌の生家を手放し、いよいよ解体されるという数日前に
30坪ほどの空き地(誰も来ないので、勝手に裏庭と呼んでいた)に座って書いたものです。


幼少期の思い出がたっぷり詰まっている空き地は
エノコログサにメヒシバ、カタバミ
オオバコ、イタドリ、たんぽぽ、スギナ
蕗によもぎにシロツメクサ
はこべ、つゆくさ、すすきにコンフリー
あじさい、山ぶどう、水仙、月見草
野生のアスパラ(毎年収穫が楽しみだった)など
季節ごとの花や実が楽しめる、クサの宝庫でした。


冬は屋根伝いにソリ遊びができ、でっかい雪だるまをつくり
雪がとけると毎朝、てのり文鳥のためにハコベを採り
夏休みのやっつけ宿題にはクサを片っぱしから摘んで押し花に。
手づくり酵素にはまっていた頃も
裏庭のクサたちで、ほぼ材料がそろってしまうので重宝していましたっけ。


裏庭と呼びつつまったくのほったらかし(当然といえば当然w)ですが
今思うとクサたちは、たがいの領域を侵犯せず
ちゃんと毎年、同じような場所に芽を出していました。
どくだみの生育場所も毎年同じ場所、同じように広がります。
陽のあたらない、ジメリとした家屋の壁づたい、裏庭のかたすみです。


後年はセイタカアワダチソウに侵食されて、裏庭の風景もかなり変わってしまいましたが、クサたちは完璧に根絶やしされることなく、なんとか多様性を保っている風でした。



古名・之布岐(しぶき)は水シブキ?


わたしたちが生きるこの地球上では
四大元素のうち、土の精霊が一等はばを利かせていると思い至ったのは
この裏庭でぼんやりしているときです。
火と風元素は土にとりこまれてしまうことは少ないですが
水元素は完ぺきに土という器に従うしかないんだなぁ、と。


もちろん水の流れが地をけずり、大地を変形させてしまうこともありますし
海岸の岩石でさえ長い年月をかけて波しぶきの彫刻対象になります。
内陸でも植物に吸い上げられて気化できる分には、循環・めぐりのサイクルに乗れますが、陽あたりが悪い場所には植物もなかなか根付かないので、じめっとしたり、どろりと感じたり、陰気な気配が濃厚になります。


それは土に閉じこめられた水の精霊たちの、SOSなのかもしれないな。
水の精霊ウンディーネを題材とした、悲しい物語が多いのは、囚われたものたちの集合意識に同期をとって、自由になりたいと訴える精霊たちの叫びを、表現しているからなのでは…?


循環しない、めぐりが悪い、太陽光の消毒作用もない、となると、かなり厄介な土精霊&水精霊の巣窟、という雰囲気が漂いますが、そんな場所を選んで毎年花を咲かせるどくだみは、いってみれば囚われた水精霊たちの救世主。
こごった場所に流れをつくる、スーパーヒーローなんじゃないかな、と。


白い花のように見える、葉が変化した総苞片(そうほうへん)は天にむかって十字を切り、その中心に小さなうす黄色の花々を掲げて、虫たちを誘います。
地下にのびる地下茎は、白く、細長く、あちこちで分岐して、芽吹く準備に余念がなく、よどんだ土のなかにそっと降ろされた、天使の梯子のようにも見えました。


古名の之布岐(しぶき)は、水しぶきのシブキ、だとしたら
水元素の溌剌元気な在り様を、思い出させる言霊です。
「之」は出る、前に進む
「布」はエーテルを表現し
「岐」はふたつの道を示す。
土・水界に深く沈むか、火・風界に上昇するか。
梯子はかけておきますから、どうぞご自由に冒険なさってくださいな、と。
当時のマインドマップには、そんな言葉が紙面いっぱいに綴られていました。



土に作用して澱んだ水をうごかす力の強さは、そのままヒトのからだにも応用されて、気・血・水をめぐらせる。
どくだみというストレートすぎる俗称は、その効力に感じ入った江戸っ子たちの、精いっぱいの表現だったのかもしれないな、と。



☆☆☆



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