aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

たんぽぽ 大地の鼓 タン・ポポ・タン

打てば響く、言の葉鼓(つづみ)


「たんぽぽ」と声に出すと、気分があかるく、楽しくなります。
アナグラムで遊ぶのもまた楽しく
ぽぽたん
ぽんぽた
ぽたんぽ
たぽんぽ
たぽぽん
んたぽぽ
んぽたぽ


どの組み合わせも、こども心がくすぐられるようでこころが弾みます。
連続して口にすると、からだがリズムを刻んでうごきだし
うきうきわくわくする魔法の呪文よろしく
いちめん黄に染まる野っぱらにぴったりの響きだなぁと感じます。

たんぽぽ


キク科タンポポ属のたんぽぽ。
地球上でもっとも分化し、進化しているキク科植物のなかで
春まっさきに花を咲かせる野草のひとつです。
(春開花するたんぽぽは在来種、帰化したセイヨウタンポポは年中花を咲かせ、昨今では交雑種も旺盛です)


たんぽぽの茎の両側に切り目を入れて水に浸けると放射状に反り返り
砂時計のような鼓のかたちになります。
江戸時代にはツヅミグサ(鼓草)と呼ばれ
タンポポは太鼓を意味する幼児語でもありました。



太鼓は大昔からある楽器のひとつ。
腹太鼓(はらだいこ)や腹鼓(はらづつみ)、手拍子、足ぶみ、舌鼓。
ヒトのからだを使う仕草で、大地や大気を震わせることは
どれも楽し気で周囲の様相を変化させる魔法の音をともないます。


日本の太鼓歴史についての明白な定説を探すことはできませんでしたが
天神山古墳(群馬県、古墳時代)で太鼓を打つ人の埴輪が出土しているそうです。
太鼓や鼓は祭器として神事につかう、という印象が強いと思いますが
世界のなかでも、特にシャーマニズム文化において太鼓は精霊や神霊と交信するために欠かせないものでした。


古く日本でも、太鼓の音は異界に届くものと考えられており
こどもが神隠しにあったときは、太鼓をたたいて異界へ音を届けつつ、探し歩いていたそうです。


西アフリカのトーキングドラムは、遠距離通信に使われていた技法で
おどろくことに民族の物語さえ太鼓の音だけで継承されているとか。


太鼓の音色は時間や空間に閉じこめられない
とくべつな響きをもっているのかもしれません。
トーキングドラムや鼓など、砂時計のカタチの太鼓は
とくに現世と異界を鏡面のように合わせて響かせる
秘密が隠されているような気がします。



タンポポコーヒー(掘ったらすごいんです)


タンポポはニガナ、クジナ、タナとも呼ばれていました。

世界大百科事典【タンポポ】より

茎を笛にしたことからピーピーバナ,白い綿毛の種子を飛ばした後の形からガンボウジとよばれたのである。

春にはタンポポの若葉をお浸しやあえ物にしたが,ほろ苦い味がするためニガナとかクジナともいわれた。

タナは田の菜、田んぼの畝に生える野菜という意味で
現代でも世界中で食材利用されています。
若葉は少し苦みとうまみがあり、ルッコラやチコリ、ベビーリーフのように使えます。
花はサラダに散らしたりジャムに入れたり、いまでは食用タンポポも市販されていますから、いろいろなメニューが検索できます。


タンポポコーヒーは今ほどハーブが一般化されていない数十年前から
コーヒーの代用品として、あるいは健康茶として出回っていました。
根を乾燥させ、炒って粉末状にしたもので
腸の環境改善やむくみ解消によいといわれています。
民間療法では肝臓や腎臓の強壮剤
便秘や消化不良を改善する目的で用いられてきました。


たんぽぽの根はとても長く、30cmから1メートルになるものもあり、見た目は少しひねたゴボウのようで、きんぴらにしてもおいしく食べられます。
じっさい掘ってみると、生命力に満ちた力強さに圧倒されます。
日干ししたものは漢方薬の蒲公英(ほうこうえい)となります。



底まで降りた、たんぽぽの精


土中にむかって太く長い根を伸ばし
地表ではロゼット状に広がる葉のつけ根につぼみをつけると
そこから葉もなく枝分かれもしない1本の茎がニョキニョキ伸びて花を咲かせます(花茎といいます)。
笛にして遊んだり、砂時計型の鼓になるのは花茎で
ストローのように中は空洞、筒状になっています。


中身がうつほ、筒状なのは、現世的な栄養物「以外」のものを運んでいるから、と考えたりしています。


土中深く根を伸ばすたんぽぽは、土の元素とはかなりの仲良し。
土元素の最深部まで降りることに成功したものの
植物ほんらいのエーテル的性分を見失わないよう
精妙な気をふんだんに運ぶ筒状の花茎をのばし
土と水の精霊が入りこめない、風の精霊の通り道を確保したのではないかな、と。
空気を振動させて、風の精霊たちに伝令をたのむ
太鼓のような構造に、進化したのではないかしらん。



四大元素の物質的な重さは
土がいちばん固形物で、重くなり

風(空気)

の順にかるくなってゆきます。


日本のように湿度がある土壌の重さをものともせず根を深く伸ばし
ましてやアスファルトで蓋をされた地表さえも
生存環境として活用してしまうたんぽぽは
物質的な重さ・固形物にとりこまれないように
土元素と「話をつけた」凄玉ハーブ。


大地に「たん」と根を響かせて、うつほ茎が「ぽぽ」と返す。
打てば響くたんぽぽリズムは、土元素の不動性質と風元素の広く行き渡る性質をみごとに融合させた、大地の鼓、そのものだなと感じます。



筒状の花茎にひらく花は3日ほど花を咲かせ、2週間ほどで白い綿帽子になります。
風に舞う羽根つきの種は、もちろん風の精霊たちが遠くへ運ぶ仕様になっています。
綿帽子は水元素が旺盛な雨の日に開くことはありません。

たんぽぽの綿帽子


たんぽぽの茎を折ると白い乳液がでてくるので、地方によってはチチグサと呼ばれることもあります。
ゴム質の白い液はとても苦く、虫の捕食を避けるため、また細菌やカビの侵入を防ぎ、傷口の修復をする作用があると考えられています。



☆☆☆



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