aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

つゆくさ/露草 青い露の精

食べられる薬


朝ひらいて昼にはしぼむ、道ばたでよくみかけるつゆ草は東アジア原産の1年草。
万葉集には月草という名で登場します。
ほかにも青花/あおばな、帽子花/ぼうしばな、蛍草/ほたるぐさ、鴨跖草/おうせきそうなどの呼称をもっています。


つゆくさ


澄んだ青い花の色は、アントシアニン系色素とマグネシウムが結びついたもの。
花から取りだした青色は、ついても水ですぐに消えてしまうので
友禅など染め物の下絵用絵具として使われています。


日本全国の山野、あぜ道、都会のみちばたに根をおろし
朝露の光る時間に花ひらき、露(つゆ)のように小さい花、ということで
つゆくさと呼ばれるようになりましたが
古名は万葉集につかわれていた月草(つきくさ)のほうで、9首うたわれています。


蛍草(ほたるそう)は、蛍をかごに入れて愛でるときに一緒に入れる草だからとか。


花の咲くころに全草を乾燥させたものを鴨跖草(おうせきそう)といい
下痢止め、解熱などによい薬草として使用されてきました。
日本のハーブとして、古くから愛されてきたつゆ草は
むくみや便秘対策にもなる民間薬、ハーブティとして愛飲されています。


つゆ草を摘むと、ほんとうに朝露がにじみ出るようなつや感があり
ぎゅっと握るとしぼり汁が出てきます。
その汁はあせもや、かぶれ、腫れ物にあてるとよい、おばあちゃんの知恵袋のひとつです。



地上部の全草はおひたし、あえ物、サラダになります。
春先の若葉や茎は柔らかくてクセがなく
表面がつやっとしているので舌ざわりもよいです。
夏は花ごと摘んでさっと天ぷらに、美しさをそのまま食材にできます。



日本の作家、徳富蘆花(1868年-1927年)は
「みみずのたはこと」でつゆ草を露の精と表現しました。


・・・惜気もなく咲き出でた花の

透き徹る様な鮮かな純碧色は、

何ものも比ぶべきものがないかと思うまでに美しい。

つゆ草を花と思うは誤りである。

花では無い、

あれは色に出た露の精である。



季語は文化のタスキ


日本人のもっている「もののあはれ」精神。
なんとはなしに、しみじみと染み入る印象。
しみじみとした深い感情。


平安時代の人は雨を400以上もの言葉で表したそうです。
たとえば二十四節気七十二候、清明の日は
例年、大気が澄んできもちのよい日が多く
あきらかに他の364日とはちがう、とくべつな一日、という気配があります。


清明の時節にやわらかく静かに降る雨を、発火雨(はっかう)と呼ぶそうです。
桃の花に降る雨が、遠目からは火を発しているように見えることが語源となったそうで、またの呼び名を桃花(とうか)の雨、または杏花雨(きょうかう)とも。


自然のいとなみに四大元素のはたらきを感じ
もののあはれを言語化してくれた古人の感性を
そのまま現代につないでくれた草花たち。
つゆ草はまちがいなくそのひとつです。



つゆ草につく朝露は、朝もやの結露というより
自らの水孔からでた水であることが多いそうです。
それを知ってか知らずか、月草という古名は
月のしずくを受けとって芽吹いた草花のような
「地上に開花するのは朝の時間で精いっぱいです」みたいな
つゆ草の植生をオーラごと表現しているようで
古人の見る力、解像度の高さに心服します。



つゆ草の受粉は、朝に活発にうごく虫が媒介しますが
万が一虫がやってこなかったとしても昼過ぎには花を閉じて、自家受粉をします。
花のいのちは一日だけ。
しかも陽光が強くなるまえに閉じてしまうので
虫がやってこなくても大丈夫なように進化したのだと思います。


つゆ草の開花は6月頃からはじまりますが
9月に入ってもじゅんぐりに花は咲きつづけます。
季語としてのつゆ草は初秋のものとされています。
ちなみに写真は9月に入ってから、朝の散歩道で撮影したものです。



つゆ草のように初夏から秋にかけて花を咲かせる植物は
季語をいつにあてるのか、どうやって決めてきたのかな、と思うことがあります。
和裁を習っていたころの先生曰く
「それを見て、いちばんしみじみと感じ入ったのがいつ頃なのか
先人の記憶がつみかさなって決められたものだから
具体的にこういう理屈で、とは説明できない」とのことでした。


初秋にあてたつゆ草を、たしかにそうだねぇ、と思う人たちがいて
脈々と言の葉をつないで、現代に受け継がれていることを想うと
感性の共感にタスキをかけてつないでいくことは
文化そのもの、民族魂を育むことにもなるのかなぁ、と思います。


つゆくさ



☆☆☆



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