aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

サイプレス/糸杉 涙のガーディアン

水のトラブル


サイプレスの香りは、和名イトスギ、または西洋ヒノキと呼ばれる針葉樹の葉と球果から採油されます。
ヒノキ科イトスギ属の高木で、クリスマスシーズンにはツリーやリーフの土台によく使用されます。

サイプレス、イトスギ


40~50メートルほどに大きく成長し、幹は腐りにくいことから建築材に利用されます。
イタリアでは家を建て、船をつくり、エジプト人は棺をつくり、ギリシャ人は神々を彫刻する素材に使用してきました。
ヨーロッパでは墓地に植えられ、キリストが磔刑になった十字架もサイプレスでつくられたという伝説がのこっているので「死」に結びつけられることが多いです。


古代エジプトのパピルスにサイプレスが薬や薫香に使用されていた記述があります。
古代ギリシャ人は冥府の神ハデスに献上し、死と永遠、悲しみと慰めの象徴としました。


医療の分野でも古くから活用されてきた記述がのこっており、ギリシャの医師ガレノス(AC165年頃)は内出血と下痢の処方に使いました。



サイプレス精油は、カタル性の鼻水タラタラ状態や、治りのおそいグズグズニキビ、傷など、また更年期のホット・フラッシュで滝のように汗が出るときや、手足の発汗が多いときなど、各種水漏れトラブルを癒してくれます。


収れん作用でキュッとひきしめ、からだでも精神でも、なにかが過剰になっているところに到達して、血管を収縮し、水分の過度な喪失を抑制する働きがあるといわれており、サイプレスの芳香は、体液流出で困るときだけじゃなく、意味もなくおしゃべりが止まらないときや、イライラで小言が止まらないとき、ブツブツと愚痴が止まらないときにも役立つなぁと感じています。


水漏れ注意といっても、涙やヨダレ、鼻水や下痢は、体内不要物を水といっしょにぜんぶ出し切る手段でもあるので、サイプレスは最終手段というか、水漏れが慢性化しそうになったタイミングで芳香するのがベターかな、と。



涙でお掃除


サイプレスの得意技、なにかが過剰になっているところに到達してひきしめる、という作用力には、秋めいてくる季節毎、お世話になっています。


四大元素のうち水比率が過剰になると、悲しいきもちに凌駕され、とくに秋風吹くころは、肺が冷たい空気に満たされることで興奮して、メランコリックな気分を引き寄せやすくなるともいわれます。


悲しみにのみこまれて、まぶたの奥がおもはゆく、息を吸うと肺の上部がフルフル震えて、わけもなく泣きたい気持ちになっても、大人になるとそう簡単に泣くことはできません。
泣くからにはそれなりの理由が必要、みたいな関所があって、なんとなく泣きたいから泣く、という行為にはストップをかけてしまうような。


そうして悲しい気持ちをそのまま放置してしまうと、まぶたの奥から頬骨、上あごに重さが広がり、表情筋にゲッソリ・くよくよ感が漂ってしまいます。


そんなときはサイプレスの香気を肺にたっぷり吸いこんで、自分史上鉄板の名作のなかから泣ける歌とか映画で号泣して眠りにつく⇒次の朝、目やにがたっぷり出ていたら毒素排泄大成功、という感じです。


頬骨の重だるさがのこっていたら、洗面器にお湯をはりサイプレスを2、3滴。
お湯に肘をつけて、手のひらで頬骨を包み込んで頬杖をつき、くよくよ表情筋をもち上げます。
洗面器をつかった肘浴、手浴、足浴などは、香りも室内に広がり、お手軽なわりに即効性があるので重宝しています。



息づかいで最終仕上げ


秋になるとさんぽの足運びも少しだけ早歩きにして、自分の呼吸音に集中する、というのも恒例になっています。
呼吸法や、走ったり泳いだりも効果的。
とにかく自分のハッハッという息づかいに集中する時間があれば、肺にたまった悲しみを醸成するナニモノカが満足して霧散霧消するような気がします。


吐息にふくまれる水分量は1日300~500㎖といわれていますが、水の精とくっつきやすいメランコリック成分は、オシッコ・汗 < 涙 < 吐息の順番で排泄されるように感じています。



世界の色を失ったかのような時期が過去数年ありましたが、そのとき唯一悲しみのトリガーになったのはゴッホ氏の絵画でした。
ひまわりの花で有名なゴッホは、死期が近づくにつれてサイプレスに興味・関心が引き寄せられ、星月夜などの絵を描きました。


地上から見上げると、細くて高いサイプレスの木は、空を切り分けるような、すっくとした立ち姿で、わたしたちを魅了します。


ヨーロッパで死別の悲しみに暮れる人々を慰めるために墓地に植えられるサイプレス。
生と死を明確に切り分けるかのように、天にむかってまっすぐに伸びる大木は、悲しみをきちんと味わい、慰め、和らげ、ひきしめるというプロセスを思い出させてくれる、涙の保護者なのかもしれません。




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