aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

梨  九頭龍様の好物

海から生まれた女神アフロディーテ/ヴィーナス


ボッティチェリ(ルネッサンス期、イタリア)による絵画はあまりに有名です。
海から生まれた女神・アフロディーテ/ヴィーナス。
風に舞う花は女神誕生とともに生まれた白薔薇、風神と花の女神、季節の女神が周囲を取りかこんで祝福しています。
誕生して後、西風に吹かれて理想郷の果樹園へたどりついた一説を表現した絵といわれています。


古くはギルガメシュ神話に登場し、聖母マリア、クレオパトラに縁深く、薔薇の冠・ロザリオが祈りの道具となり、薔薇戦争によって王家の紋章に配され…と、植物のなかでもとりわけ薔薇のうけもつ使命(役割)は大きいように思います。



植物学上バラ科に分類された植物、花はもちろんですが果実をつける植物も人々に愛され、また人々に愛をふりまいて、愛の女神の名にふさわしい役割を果たしてきました。


梨、桃、苺、林檎にさくらんぼ。
あんずにスモモ、ビワに梅、カリン、マルメロ、ラズベリー。
眺めてうれし、食べてうまし。 
まさに愛と美と豊かさの象徴です。



果物を実らせる植物のうち、お花のガクの下(土台)部分が膨らんで実となるものを梨状果(なしじょうか)といいます。
その名の通り梨を代表として林檎やカリン、マルメロ、ビワなどがあります。


西洋梨



梨園(りえん)は音楽養成所


唐の時代に梨の植えられた庭園で、宮廷音楽家を育てる養成所がありました。
時の皇帝が直々に教えていたことから、梨園で音楽を学んだものたちは皇帝梨園弟子と呼ばれ、一目置かれていたそうです。
日本では一般社会と一線を画した特殊社会、歌舞伎俳優の社会を梨園と呼びますが、歌舞伎が一世を風靡した江戸時代につけられた呼び名だそうです。


梨の原産は中国といわれていますが、日本でも登呂遺跡(静岡にある弥生時代の集落)から梨の種が多数出土されています。
日本書紀には梨の栽培を奨励する記述がのこされています。


古代中国から西洋にもちこまれた梨はセイヨウナシ(ラ・フランスなど)になり、古代ギリシャ時代に栽培されていた記述があります。
日本の梨とちがって、細長い瓶のようなかたちで、糖度と香りが高く、石細胞(シャリシャリした歯ごたえのもと)がないので実はやわらかいです。



栄養価の高い果実


梨はビタミンE、ミネラル、食物繊維が豊富です。
バラ科植物特有の天然甘味成分ソルビトール、アミノ酸のひとつアスパラギン酸、美白成分で知られるアルブチン、ポリフェノールの一種フラボノイドと微量のアミグダリンを含みます。


ソルビトールはグルコース(ブドウ糖)が変換されてできる糖アルコールのひとつです。
口のなかに入れると、ひんやりした感触があります。
甘味成分ですが、酸への代謝がされにくいので、虫歯になりにくい特徴をもっています。
保湿効果が高く、化粧品の保湿や増粘目的で使用されることも多いです。


アスパラギン酸はアンモニアを体外に排泄するための利尿効果が高いアミノ酸で、神経伝達物質の低下を防ぐといわれています。 


アルブチンは紫外線などによるメラニン合成を抑制する作用をもつことがわかり、肌を守る物質として有名になりました。


アミグダリンはバラ科植物の未熟な果実、葉、種子に多く含まれる成分ですが、果実が成熟するにつれて酵素分解が進み消失します。血液浄化作用のある成分です。



水神・九頭龍様の好物


霊山・戸隠山のふもとにある戸隠神社のホームページに、こんなご挨拶文があります。
「紅葉も始まり、実りの秋を迎え
九頭龍大神の好物とされる「梨」「たまご」のお供えを
全国の皆様から沢山上げていただく季節となりました。」



今は昔、(鎌倉時代に記された文献から)
九つの頭をもつ龍(鬼とも)が岩戸に閉じこめられ
善神に転じて水神様となり人々を助けた、というお話があります。


水神様は九頭龍権現として崇められ雨と水を司ります。
歯痛の治療にもご利益があるとして
好物の梨を供えることで、歯の痛みを取り除いてくれるそうです。


日本各地にある九頭龍伝説、9つの頭をもつ龍は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)伝説を彷彿とさせます。
古事記には「須佐之男命(すさのおのみこと)は神通力で櫛名田比売(くしなだひめ)の形を変えて、歯の多い櫛にして自分の髪に挿した。」と、歯という言葉がでてきます。



恐怖を生むのは境界線を守るため


歯は自他との一線を画す、最後の砦。
自分ではないもの(たべもの)を身の内に取り入れるからには、他物のカタチをかみ砕き、同化しやすい液状にしなければなりません。
他物は歯の砦を通りぬけたが最後、食道や胃腸、小腸大腸などの筒を通りぬけ、火と風と水と土、4つの元素が消化(昇華)されながら、まったくべつのものへと変化してゆきます。



龍、オロチは地上に降りて蛇に化身し、筒形の長いかたちは次元間をつなぐトンネル、樹状に枝葉を伸ばすエーテル体、地表に広がるレイラインの象徴と考えています。
地上に降りる場所は川であり、滝であり、湖。
ご神体には土が混じらず、水と空気でできている(のではないかしらん)。


世界神話で同じ型をもつヒュドラは天に昇ってうみへび座になりました。
アルファ星アルファードは、すぐそばにあるろくぶんぎ座を守っているので、天界に昇っても強面(こわもて)キャラ。
安易に近づくと恐怖にのみこまれてしまいます。
だれもが簡単に往来せぬよう「とおりゃんせ」の役目をもっています。


「守る竜」といえばギリシャ神話に黄金の林檎をまもる竜のお話、ヘラクレスの12功績物語のひとつがあります。
ゼウスは黄金の林檎が実る木を、ティタン族アトラスの娘、ヘスペリデスの姉妹に守るよう命じて、姉妹は一匹の竜とともに、この木を守っていました。


ヘラクレスは黄金の林檎の木があるヘスペリデスの庭がどこにあるのかわからず、あちこち訪ね歩いて、ようやく父親のアトラスを探し出します。
アトラスはティタン族として第3世代の神々(ゼウス勢)と戦い敗れたので、天地を支え続ける罰を続行中です。
天地を支えて身動きがとれないアトラスに変わってヘラクレスが大地を支え、その間にアトラスが娘のもとに行って林檎を取ってくると約束し、ヘラクレスは黄金の林檎を手に入れることができたというお話です。


黄金の林檎を守っていた竜はラドンとも呼ばれ、百の目を持つ怪物。
天に昇ってりゅう座になりました。アルファ星はトゥバン。
トゥバンは宇宙図書館、アカシックレコードを守る星です。


ヘラクレスは、うみへび座になったヒュドラ(アルファード)をすでに退治した後だったので、矢にヒュドラの毒を仕込んで、ラドン(トゥバン)も退治したと伝えられています。
地上の栄華を手にするほど、ヘラクレスは地上にしっかりと地盤を固め、逆に退治された怪物たちは地上要素(土元素の楔)から解放されて、液状になり大気になり、精妙なエーテル、そしてアストラル体へと昇華して星座となりました。


ドラゴン、ペガサス、ケイローン、ネメアの獅子やデイダラボッチ。
地上世界で役割を終えたものたちが天界に昇るたび、彼らが守っていた民族魂も、一緒に昇華して地球次元から消えていくのかもしれません。



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現代の英雄元型ヘラクレスと蛇についてはこちらの記事にも。


2代目ティタン族から3代の神々系譜についてはこちらの記事にも。


ヘスペリデスの庭にあるラドンが守っていた黄金の林檎についてはこちらにも。


いつも読んでくださりありがとうございます。


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Shield72°公式ホームページ

*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。