aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

白樺 植物界の切り込み隊長

森をつくる先駆者


北半球に自生するカバノキ科カバノキ属の落葉樹。
幹が白いのでシラカバと呼ばれますが、正式な和名はシラカンバです。


白樺


樹齢20~30年のあいだ樹皮は白いですが、それ以外は赤茶色をしています。
樹皮にはベチュリンと呼ばれる抗菌効果、抗酸化作用のある物質が含まれています。
またヘルペス・ウイルスの増殖を抑制する効果もあり、医薬品原料としての利用も計画されているそうです。



白樺はほかの樹々が育ちにくい瘦せ地(火山灰や砂の多い土壌、山火事の跡地や崩壊地など)でも根をはることができます。
まさに禿地を緑にかえる、植物界の切り込み隊長。


白樺が根をはり落葉する過程で土壌はゆっくりと肥やされ、いよいよ堆積物がふえて土地が豊かになってくると他の樹々、ミズナラやトドマツなども育ち始めます。
禿地で日差しが強い場所にいち早く進入して、緑の純林を生み出す白樺を「先駆樹種=パイオニアプランツ」と呼ぶそうです。


強い陽光を好む白樺は陽樹とも呼ばれ、成長が速く、寿命は短く、ゆえに大木になることはありません。(日陰でも育つ木を陰樹といいます)
後続隊の大きく育つ樹々が成長し、日当たりが悪くなってくると、白樺は立ち枯れ、倒木となり、朽ちて次世代の養分になります。



豪胆な切り込みスピリット(手前みそ話含む)


わたしは北海道で生まれ育ったので、いちばん初めに覚えた木は白樺でした。
あちこちに生えていて、白い幹が印象に残り、目に留まるたび「あれなに?これなに?」と聞いていたからだと思います。
すこし田舎にいくと日当たりのよい場所に群生する白樺林はそこ・ここに見られます。
白樺林独特の、爽快でひらけた空気感は、いまでも世界の美しさを思い出すトリガーになっています。



私事ばかり引用して恐縮ですが、わたしが17歳になったころ父が他界し、こころの内でその事実をきちんと臓腑におとすまで10年以上かかってしまいました。


父はすっかり絶滅危惧種となってしまった勝新太郎さんのような、豪快で豪胆で、無鉄砲極まりない素行の人でしたw
40代の若さで亡くなりましたが周囲の人からは、ああいう人だったから早死にするのもフシギなことじゃないよね…という心の声がダダ洩れで、わたしもどこかでそんな風に感じていたかもしれません。


ある日札幌から函館にむかう道中で、広く開けた白樺の純林を目にしました。
やっぱきれいだなぁ、白樺にしかつくれない、この独特のひらけた空気感は、いったいなんだろう…などとひとりごちておりましたら、突然父のことを思い出しました。



生命種はさまざまに役割があって、切り込む人、耕す人、維持する人、収穫する人、配分する人、いろんな宿命を背負って、いのちのタスキをつないでいくんだなぁ。
人も動物も植物も、役割があるんだなぁ。
地球で生きるって、そういうことなんだなぁ。


ふわりと降りてきたその思いは、それまで気づかなかった、コチコチに固まっていた芯の臓を、ふわりと解きほぐしてくれたように感じました。


声なき声に背中を押されて、白樺のことをもっと知りたくなり、樹液を採取するワークショップに参加してみたり、白樺の樹皮で焚火をしてみたり、白樺林を探すドライブが週末のルーティンになったり、自然に親しむことがふえてゆきました。
フィンランドのサウナで使用する白樺の若葉について調べているとき、植物には芳香成分があるということを知り、精油(アロマ・エッセンシャルオイル)に興味を持つに至ります。



人はどこからきて、どこへいくのか。
父の死がわたしに授けてくれたもので、一番大きかったのは「地球人としての人生」を考えるきっかけです。
父の魂はどこへいったんだろう、人は死ぬとどうなるんだろう。
17のころそう思いはじめて、いまだに謎は解けぬまま、植物やハーブたちに教授してもらう日々は続いています。




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*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。