aroma72 ハーブ天然ものがたり

魔術から化粧品、厨房から医薬まで。ハーブ今昔、天然もの、所感まじり。

葡萄 魁神の聖樹

ディオニュソス/バッカスの聖樹


果実カテゴリー@世界消費ランキング
1位 バナナ、2位 柑橘類、3位 葡萄

魁神の聖樹、葡萄


世界で大量に消費されている葡萄。
生産量のうち71%がワインに、27%は生食用、2%はレーズンなどの生産用です。
7割がお酒に化ける果物は、葡萄をおいて他にありません。


酒の神様として有名なディオニュソス(ギリシャ神話)/バッカス(ローマ神話)の聖樹であり、ディオニュソスは葡萄の栽培法やワインの作り方を地上にもたらした神として有名です。


ギリシャ神話におけるディオニュソスは、豊穣と葡萄酒と酩酊の神様。
ゼウス神と人間の女性セメレーの子供として誕生したとされていますが、出自は女神アテネ同様、身ごもった母が死んでしまったので、母の骸から胎児が取りだされ、ゼウス神の身体のなかで成長します。


ディオニュソスという名は、若いゼウスという意味で、そもそもゼウス=ディオスとは、ギリシャ語で「神」を意味することばです。



ディオニュソスの聖獣は


牡の山羊
牡の牛
牡の鹿

イルカ

ロバ
と幅広く、牧神・牧羊神でおなじみの半獣神・サテュロスをお供につれているアートや絵画を目にすることも多いと思います。


聖樹は葡萄と蔦。


酒杯、豊穣の角、テュルソスと呼ばれる杖も、ディオニュソス神のイメージに肉付けされる小道具です。
豊穣の角は、ビスケットが湧き出る魔法のポケットみたいに、食べても食べてもパンや果実が次々と湧き出て枯渇することのない魔法の角です。
クレタ島で幼いゼウス神を育てた、ニンフ・アマルテイア(雌の山羊)の角と言われています。


日本では、ローマ神話のバッカス(バッコス、バックス)の名前の方が有名で、飲食店や楽器、お菓子に使われるなど、人類にとっては親近感がある神様といえます。


ディオニュソスは世界中を放浪し、自らの神性を布教して旅した神話が有名です。
神と人のハーフなので、神界に認めて受け入れてほしければ、地上に降りて人類に認知され、ボトムアップで登りつめてみせろ、というわけです。


子供時代は女の子として育てられたとか、両性具有的に描かれたりとか、
地上放浪の旅のなかで人々を心酔・酩酊・狂信させ、かと思えば人を動物やイルカに変えたり、八つ裂きにしたり・されたりと、


・両性的 
天界種族、天使・妖精と同じで2極分割していない。


・酩酊 
脳機能をフル活用できる、神聖な法悦状態が通常運転。


・人性と獣性の入替え 
古代エジプト時代までは隠されていなかった、タマフリ、タマシズメの御業をもっている。


・八つ裂き 
創造は分割=地上に降下することの体現で、その逆に進化は統合=天界への上昇。
地上降下と天界上昇の次元移動ができる。
その他次元移動する象徴神はヘルメス神、トト神、オシリス神など。


といった印象が記憶に残る神話元型になっています。



「元ひとつ」

それじゃあ魂はどこから来て、どこへ行くのだろう?


ブドウの形状は独特で、ひと房にたくさんの粒が実ります。


元はひとつであったもの、つまり神性なるものは男女(陰陽)に分離しておらず、創造をくりかえすことで分化・分離して人(男女)になり獣になり植物になる。


そう考えると「分化と統合」という御業をもっていた神としてのデュオニュソス像が見えてきますし、葡萄の房はそんな御業の秘密を人類に伝えようとした、ディオニュソス神の親心なのかな、と思ったりもします。


人類が神聖さをとりもどし、大いなる自己とかハイアーセルフと呼称される大元の自我に還っていく術は、古代エジプト時代が終わり、ギリシャ・ローマ時代に突入したころからヴェールに隠され、謎の上に謎が塗り重ねられ、わたしたち人類はすっかり「来た道」「帰り道」を見失ってしまいました。


「いのち」はどうやら、肉体だけの寿命カウントにとどまらず、死後も続くらしい。
生まれる前の記憶を持っている子供もいて、研究は進んでいる。
そんな説を耳にするたび、ひと房の葡萄というハイアーセルフ、そのひと粒の果実であるヒトの魂は、どこから来て、どこへ行くんだろう?と、地球という巨大迷路のなかで迷子になった気分になります。


3代にわたるギリシャ神話の神々系譜をざっくり整理すると


・初代天空神ウラノスと大地母神ガイア
・2代目となるその子供たちのティタン族
・3代目にゼウス、ポセイドン、ハデスの3兄弟をはじめとする有名どころの揃い踏み


となりますが、3代目の神々は人と神を明確に分離して、その「違い」を明示してきました。


神々の強大な力を示し、時に懲罰を与え戒める恐ろしさ、人類を保護しつつ無慈悲無情のスタンスを常として、神と人類の明確な違いを表現し、人類がいかに卑小で非力な存在かを仄めかす神話はとても多いです。


ただし、神話や史書といったものは現代史における敗戦国にとって圧倒的に不利に書き換えられてきましたし、抹消されてしまったものや、無価値の烙印を押されてしまったものなども多々あります。
どちらかというと勝戦国のハラスメント志向(支配層と奴隷の構図=西洋独特の思考体系)が、神話元型に上塗りされ、世界中に流布されてしまったんだろうなぁ、と感じています。


それがまた謎の上に謎を上塗りする元凶になっていると思いますが、ゼウスと人の子であるデュオニュソスは、貶められても辱められても、そんなことは意に介さず、
「わたしたちはみんな神の子で元はひとつ、葡萄のひと粒も、ひと房も、葡萄の木という大元から分割された末裔だよ、ワインでも飲んでリラックスして、魂の声に耳を傾けてみない?」と、グラス片手ににっこり笑って、アマルテイアの豊穣の角を差しだしてくる、そんなイメージが浮かんできます。


バッカスという神の名が、人類に親しまれ愛されてきたのは、大元から「来た道」を思い出す、かすかな希望が見え隠れしているからかもしれません。
「来た道」は、肉体が枯れたときに「戻る道」。
わたしたちの魂も、きっと長い長い旅の途中にあって、デュオニュソス/バッカス神が地上を旅した記憶と、どこかリンクするところがあるのだろうな、と。



葡萄の歴史


葡萄の歴史は古く、BC3000年頃に原産地とされるコーカサス地方、カスピ海沿岸でヨーロッパブドウの栽培があったといわれています。


メソポタミア文明、古代エジプト時代に、ワインは珍重され飲用されていたと記述が残っているので、ワイン醸造もかなり古い時代から始まっていたことがわかります。
メソポタミアは気候・土壌がブドウ栽培に適していなかったようで、交易によってワインを入手していたそうです。
古代ギリシャでは、ワインのためのブドウ栽培が大々的に行われ、ブドウ園は広く開設されました。
ギリシアからローマ帝国時代にかわったあとも、ワインの人気は高く、ブドウ栽培も帝国各地で行われるようになります。
ローマ帝国が崩壊したのち、ブドウ栽培は衰退していきますが、各地の修道院などによって生産は維持され、やがて政治が安定するとともに再び栽培は盛んになります。



地球史において、11世紀から13世紀は気候が温暖だったため、イングランドなど北方の国でもブドウ栽培が盛んになります。
現在のベルギーでも輸出用ワインを作るためのブドウ栽培がおこなわれていたそうです。
14世紀頃から気候が寒冷化し、ブドウの栽培地域は南方に集約されていきました。
その後大航海時代が始まり、世界各地にブドウ栽培は広まってゆきます。


お酒はいろいろな穀物、果物、根菜から作ることができますが、葡萄・ワインによって生み出された文化・産業は、米麦文化・豆文化に匹敵する規模です。
人類史の文明を語るうえで欠かせない果物として、何千年後の後世に語り継がれていくのだろうと思います。



種からとれる、グレープシードオイル


ワインを製造する地域で、のこった種子からグレープシードオイルが採油されます。
種子にはプロアントシアニジンという成分が含まれ、健康食品用などに抽出されているそうです。


プロアントシアニジンはポリフェノールの一種で、抗酸化作用が高いことや、腸内フローラの改善に効果があるとして研究がすすめられており、サプリメントも出回るようになってきました。


グレープシードオイルは軽くすべりのよいオイルで、肌になめらかに浸透します。
リノール酸を多く含み、前出のポリフェノールに加え、ビタミンE・トコフェロールなど抗酸化作用にすぐれた成分を含みます。
無味無臭で、淡くうすい黄金色をしており使いやすいオイルです。



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*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。