aroma72 ハーブ天然ものがたり

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アルガン ヤギの生る木?

貴重なアルガンオイル


アルガンの木はアフリカ大陸北西部に自生するアカテツ科の植物。
種子から採れる油がアルガンオイル(アルガニアスピノサ核油)として利用されます。
ビタミンEの含有量が多く抗酸化力に優れていることから、現代では化粧品原料として有名になりました。

アルガンの木


アルガンの木は大きなもので高さ10mに生育し、木は木工や暖房に、油を搾りとった後のかすや葉は、家畜(ヤギ)のごはんに使われます。
料理や美容、健康維持のためにアルガンオイルを活用してきた歴史は数世紀以前にさかのぼり、北アフリカの先住民族アマジク人(ベルベル人)の生活には欠かせないものでした。
アマジク人は確かサッカーで有名なジダン選手の出自民族です。


ネイティブアメリカン、チベット人、アボリジニー、ハワイのカフナ、ケルト人、イヌイット等々、自然と共生する叡智に富んだ民族に伝承されてきたお話に、興味が尽きることはありません。
口承されてきた物語には必ず、その地に根づいた植物、動物や虫たちが登場して、各土地のゲニウスロキ・土地神様の印象を教えてくれたりします。




進化プロセス極まれり


アカテツ科の植物は世界中の熱帯域に生育します。
そのほとんどが標高1000メートル以下の熱帯多雨林に分布しています。
熱帯域ではないモロッコ産のアルガンオイルは、乾燥地帯に適応するために、独特な植生を獲得して進化プロセスを積み上げてきました。


夜間は3℃、日中は 50℃まで上がる半砂漠の乾燥地帯で寒暖差への耐性を獲得したアルガンの木。
根は水を求めて土中深く、広く伸び、地下30mから水を吸い上げることができます。
年間雨量100 ~ 200mmの地域で生き残ってきた植物らしく、雨量がまったくない干ばつの年は、葉を落として休眠し数年を耐えるといわれています。


乾燥地帯で生き抜いてきた植物の葉は、光合成をするときに水分が蒸発するのを抑えるため棘に進化します。
アルガンの木も棘をもち、葉を落としても必要最低限の光合成を保ちつつ、地下部位では根を発達させて水を吸い上げます。


大きい広い葉をレセプターとして、太陽光を優雅に受けとる植物とは真逆の様相。
小さな棘は身の内にあるわずかな水分を損なわず、太陽光を受けとるための工夫です。
棘は極地で生き抜く工夫のたまものだったのか…、タコツボ見識だった私はそれを知ったとき、頭のなかで「がーん」と誰かの声が聞こえたような気がしました。



人の細胞をまもり、次世代の植物をまもるビタミンE


アルガンオイルに含まれるビタミンEは植物のなかにある物質の名称としてトコフェロールと呼ばれます。
それは過酷な環境下で生き残るための必須アイテム。
干ばつの休眠中も、種のなかにある脂質を酸化させないように守りながら、芽吹きの時をじっと待っています。


アルガンオイルの抽出はたいへんな労力を必要とするもので、まずアルガンの果実を数週間天日干し、その後石の間で挟んで粉砕して仁(じん)を取り出し、種子から油を搾ります。種子はとても硬いので、一日1~1.5kg程度しか取り出せない貴重なオイルです。


人にとってのビタミンEも、優れた抗酸化力で体内の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける栄養素といわれています。
人のからだを形成する細胞は約60兆個。
細胞が細胞としてのかたちと働きを続けるために、ひとつひとつが油とタンパク質でできた細胞膜で仕切られています。
トコフェロール(ビタミンE)は細胞膜の脂質部分に入り込み、細胞を酸化から守ると考えられています。



植物(エーテル)と動物(アストラル)の関係


アルガンの木自生地域では乾燥に強い家畜としてヤギを飼うことが多く、ヤギは葉や、熟す前の果実まで食べてしまうので、果実が乾燥して地面に落ちる6月頃まで、番人によって自生地域へのヤギの立ち入りが制限されるそうです。
アルガンの木番人...ヤギになめられたらアカン、すごい職業だと思います。


ヤギとの共生を選んだアルガンの木。
アリとの共生を選んだスミレ。
ハチドリとの共生を選んだランやトケイソウ。
ハナバチとの共生を選んだラベンダーをはじめとする花々。


目から何枚もウロコを落とされ既成概念が音を立てて崩れる体験をさせてくれたシュタイナー説から、まいどキテレツなお話に飛んでしまい恐縮ですが、
人間は肉体だけの存在ではなく、その外側にエーテル体、次にアストラル体があり、そもそもが、この地球時間と空間に縛られた存在ではない、と説いています。
エーテル体を植物体、アストラル体を動物体と表現し、エーテル体は個として閉じることなく枝葉のように広がってゆく、そしてアストラル体はエーテル体の創る線上を移動する点、と説明されています。


アルガン・エーテル体の線上を歩き回る、ヤギ・アストラル体。
そんな風に考えると、共進化や相利共生などの学術的見解も、因果関係が逆になってるみたいで面白いです。
同じ恒星、たとえば山羊座のアルファ星とか、ぎょしゃ座のカペラ(クレタ島でゼウスを育てたヤギのニンフ、アマルテイア)からやってきた存在たちが、地上降下場所・降臨用お座布団としてアルガンの木を選んだのかもしれません。
だからヤギ星の分身であるヤギたちは、こぞってアルガンの木に群がってしまう。
植物と動物や虫たちの間には、人間には窺い知ることのできない楽しい事情があるのだろうなと想像しています。



地球を彩るバイオーム


地上部には棘があり、休眠サイクルを自在に発動し、地下の根は活発に水を求めて生育し、ヤギとの共生をはかる(ヤギに食べてもらった種は糞として次の生育場所を得る)。


特徴を抜粋してみると、アルガンノキは地上のことはあらかたヤギにおまかせし、生命エネルギーの重心は地中にあるように思えます。
乾燥して太陽光がありすぎるなら、葉の一部を棘に進化させて活動を最低限に抑る。
水が少ないのなら根っこの方に活動エネルギーをまわして水分獲得システムを充実させる。進化プロセスというのは、ほんとうに合理的なものだとつくづく感じます。


アルガンの木を筆頭に、さまざまなバイオームを形成する植物種は、その進化形態に沿って地球上の多様な環境を彩ります。


暑くて雨の多い場所
暑くて雨の少ない場所
温かくて雨が適度に降る場所
雨季と乾季がある場所
寒暖の差がはっきりして積雪がある場所
寒くて針葉樹さえ育たない場所


-多すぎる、あるは少なすぎる水とどのようにつきあっていくか
-強すぎる、あるいは弱すぎる太陽光とどのようにつきあっていくか
-同じバイオームのなかで生きる虫や動物たちとどのように共生するか


植物たちは、
棘をもったり
細かい産毛をもったり
花の色を鮮やかにしたり
夜だけ花開いたり
虫の嫌がる匂いを放ったり
数十年に一度しか花を咲かせなかったり
ロウ成分を身につけたり


あらゆる工夫を凝らして自然環境をおおいに活用し、生きるのにちょうどいい姿形になっていきます。
動植物の姿、形は環境によって創られ、その様相がまた、バイオームをバイオームたらしめて独特な世界観を形成します。



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Shield72°公式ホームページ

*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。